The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
暫く走ると海岸が見えてきて更に寒さが増す。
するとマイキーはバブを止めると、後ろを振り返ってから優しい笑顔を浮かべた。
あまり見たことの無いその笑顔に和泉は少し驚く。
「夜景、眺めよ?」
「夜景……」
「ここさ、鳴海によく連れてきてもらってた所なんだよ。オレがムシャクシャして、イラついてる時にとか」
「鳴ねぇに…」
ビルや工場の明かりで眩しいくらいに光る海岸。
防波堤の向こうでは黒い海が漂っているが、それが何故か美しくて和泉はゆっくりと目を細めた。
何故か海と夜景を眺めていると和泉は少しだけ心が落ち着いていく。
そんな彼女を横で見つめるマイキーは、手を伸ばしてから彼女の目元を親指の腹で優しく撫でる。
すると和泉は驚いたのか目を見開かせていた。
「ごめんな、教えてやれなくて…。でも教えたくなかったんだよ、シンイチローの死に場地が関わってた事。イズミっち、場地と仲良いし幼馴染だったから」
「…俺こそごめんなさい。八つ当たりみたいに大声出して……」
「苦しかったよな。ホント、ごめんなイズミっち」
その言葉に和泉の目からはポロッと涙が1粒落ちた。
初めて見た彼女の涙に驚きながらも、マイキーは和泉の腕を優しく引っ張ると抱きしめてから自分の肩に顔を埋めさせる。
「さ、佐野先輩……?」
「泣きたい時は泣いて良いから。顔は見ねぇから」
「っう……」
小さな嗚咽が耳元で聞こえる。
泣くのを必死に堪えようとしているような、泣いている所を見られたくないような姿にマイキーはより一層抱きしめる腕に力を込めた。
そして和泉は嗚咽を噛み殺すようにしながら、マイキーの肩に顔を埋める。
泣く度に目は熱くなり、止まれ止まれと涙を止めようとするが止まってはくれなかった。
「ひっ…つぅ、うぅ……」
「オレな、鳴海と約束した事があるんだ」
「やく、そく…?」
「和泉の兄貴になるって約束」
初めて渾名ではなく名前に呼ばれた事に驚きながらも、和泉はその約束に目を見開く。
その約束は真一郎と交わしていた約束とよく似ているのだ。
『和泉。お前が良かったらでいいんだ…万次郎の兄妹になってくれよ。本来なら義従兄妹なんだろうけど…お前らは良い兄妹になる』