The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
ー三人称ー
和泉とマイキーが居なくった三ツ谷宅では、静かな沈黙が流れていた。
ドラケンも三ツ谷も黙ったままであり、風呂場からたまにルナマナの声が聞こえてくるぐらいだ。
そんな沈黙を破ったのは三ツ谷。
「和泉は知らなかったんだな…。真一郎君の件」
「エマと万作さんがわざと言わなかったんだってよ。エマから聞いたけど……イズミっちは元々心が弱いんだってよ」
「心が?」
「鳴海さんが死んだ時大荒れしてたんだって。その時のイズミっちは……死にたそうな顔してたって」
数日前ドラケンは何となくエマに和泉についての話題を振ったことがあった。
和泉は数年の間佐野家との交流を絶っていたのは何故なんだという話題を。
その時にエマは泣きそうな顔をしていた。
鳴海が死んでからの和泉は荒れて死に急ぎ『死にたい』と呟いていた時もあったと。
「そう、だったんだ…」
「大切な人の死に対してかなり敏感で心が傷付きやすい。だから言えなかったってよ。真一郎君の死んだ原因を…」
「まぁ…言い難いよな。……大丈夫なのかな、和泉。さっきまで泣きそうな顔、してたから…」
声を荒らげた時彼女は泣きそうな顔をしていた。
眉を下げて今にも泣き出しそうな顔と目を見て、三ツ谷は何も言葉をかけれない自分に悔しさを覚えた。
あんな顔を見るのは夏に親友に襲われかけたと話した時以来だろうか…。
「分かんねぇ…。でも連れ出したって事はマイキーにはなんか考えがあるんだろうよ」
「……そう、だな。二人が帰ってきたら直ぐに食べれるようにオムライス作っておかねぇとな」
「マイキーには旗付けねぇとなぁ」
笑い合う二人だが、三ツ谷だけは何処か悔しげな表情をしてオムライスを作る為に台所に立つ。
あの時なにも声をかけてやる事が出来なかった自分に苛立ちながら。
そして一方、マイキーと和泉は冷たい風を浴びながらバイクで車道を走っていた。
何処に向かっているのかも分からない中和泉はただ、マイキーの腰にしがみつくだけ。
(何処に、向かってるんだろう……。それに寒いな)
寒がりな和泉は、頬や肌にあたる冷たい風に対して眉間に皺を寄せた。
まだ10月だけれども夜になると一気に温度は下がっているせいで寒い。