The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「踏み絵……か。場地の奴本気だったんだな」
「……一虎」
「佐野先輩……けーすけ君から聞きました。羽宮一虎が真一郎君を殺した事。店に羽宮一虎とけーすけ君が侵入したことも全部」
「…聞いたんだ」
なんで彼は何も教えてくれなかったのだろうか。
俺は何も聞かされていなかったのを知っていただろうに。
真一郎君が誰に殺されたかを、その事件にけーすけ君が関わっていた事も教えてくれなかった。
「なんで、教えてくれなかったんですか…」
「イズミっち……」
「けーすけ君が事件に関わってた事を、真一郎君が誰に殺されたかって…なんで何もっ……!!!」
唇を噛み締めながら思わず声を荒らげてしまった。
こんなの八つ当たりにしか過ぎないし、佐野先輩は別に悪くは無い。
だけど苦しかった。
知らなかったのが辛かった……こんな時に知りたくなかったと唇を噛み締める。
「イズミっち、ごめん……」
「……俺こそすみません。八つ当たりして……」
「イズミっち……」
八つ当たりに過ぎない。
佐野先輩が悪い訳じゃない……そう自分に言い聞かせながら、手が白くなるまで握りしめた。
力が入りすぎているからか、それとも他の理由があるからなのか体が震えていると誰かに手を握りしめられる。
「イズミっち、ツーリング行こ」
「………は?」
「三ツ谷、ケンチン。ちょっと行ってくる」
「おー気をつけてなぁ」
「夕飯作って待ってるから。早めに帰ってこいよ」
「え、ちょ…佐野先輩……!?」
俺の腕を掴んだまま、佐野先輩は歩き出して三ツ谷先輩と龍宮寺先輩は止めることなく見送る。
急にどうしたのだろうと思いながら着いていけば、佐野先輩は自分の愛機であるバブの前に立ち止まった。
困惑したままでいると、佐野先輩が俺の手の上にメットを渡したかと思えばエンジンをかけた。
聞き覚えのあるエンジン音に顔を顰めてしまう。
「ほら、イズミっち。乗って」
「え?」
「ちょっとオレとデートでもしよ?」
「……デート?」
「ん、良い所連れて行ってあげるからさ」
そう言われて俺は拒否することなくメットを被ってから、初めての佐野先輩の運転するバブのタンデムに座ると佐野先輩は『ちゃんと捕まれよ』と言ってから何度かエンジンを吹かせてから走り出した。