The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「て事で、もう帰っていいぜ。でも和泉は残れ」
「……え、え?」
「武道、帰れ」
「でも!」
「いいから…帰れ。長居しない方がいい」
俯きながら武道に帰るよう促すが、なかなか武道は帰ろうとせず慌てた素振りを見せる。
だが早く帰さなければ修二が何をするか分からないのと、周りに芭流覇羅のメンバーが集まってきていた。
ちょっかいを出されるかもしれない。
ここは絶対に安全とは言えない場所だから、早く帰ってほしくて顔をゆっくりと上げて武道を見た。
「武道、帰れ」
「でも…そこの、副隊長は…」
「松野は俺が連れて行くから、お前は先に帰れ」
「……分かった」
渋々と言った様子で武道は帰っていき、松野への目線をやれば体は呼吸に合わせて上下に動いていた。
ちゃんと生きている事に安堵していれば、修二が両手で頬を持ち上げてくる。
「可哀想に和泉。幼馴染がまさか尊敬してた人を殺してたなんてなぁ?しかも誰にも真相を伝えられずに今日まで過ごして来てたんだなぁ」
「……何が言いたい」
「さぁ?なぁ和泉、芭流覇羅に来いよ。こっちに来ればオレも場地もいるんだぜ?どうせ東卍には明るい未来はないんだ」
「嫌だね」
修二の手を叩き払うと、俺は直ぐに松野の所に向かってから何とか起こして右腕を肩にかけてから立ち上がらせた。
ズンッと体に松野の体重がのしかかりかなり重く思わず眉間に皺を寄せながらも、運ぶ為におんぶをすると耳元で小さな呼吸音が聞こえる。
「俺は芭流覇羅には行かない。もう東京卍會弐番隊の人間だからな」
「ホント、最近言う事聞かねぇなぁ…」
「次その面見た時は殴る」
そう言うと松野をおぶったまま歩き出し、けーすけくんと羽宮先輩の横を通り過ぎた。
何も言わずに顔を見ずに歩き、扉を蹴破ってから外に出ると日が沈みかけているのが見える。
早く病院に松野を連れていかなければ…。
そう思いながらも歩くが松野が重く、歩く速さも遅くなっていく。
(それにしても…なんで、なんで佐野先輩もエマも万作さんも俺には教えてくれなかったんだろう)
真一郎君の死の真相を誰も教えてくれなかった。
それが何故か悔しく思えて、辛くてなきそうになるのを唇を噛み締めてなんとか堪える。
今は泣くよりも松野を病院に連れて行くのが最優先だから。