The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
別れを告げた和泉はゆっくりと歩き出し、行きたいと強く思ってしまった場所へと足を向ける。
そして武道は彼女の背中を少し見守ってから背を向けて、足を前へと出した。
暫く歩いていた和泉は自動販売機にて、とある煙草を購入して修二から昔貰ったライターをズボンのポケットで手遊びしながら薄暗くなる空を見て目を細めた。
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「なーケンチン」
「あー?」
「オレさ…イズミっちの事欲しいんだよね」
和泉達と別れたマイキーとドラケン。
2人は自分達の愛機を走らせながらある場所へと向かっており、マイキーは横を走るドラケンに声をかけた。
「なんだよ急に」
「兄貴がさ、昔言ってたんだよなぁ。『アイツが傍にいれば何か変わるって思ったんだ。惚れた理由もあるけど、その理由もあって欲しかったんだ』て」
「へぇー」
「オレも思ったんだよね。イズミっちが傍にいれば、何か変わるんじゃないかって」
口角を上げたマイキーを横目で見たドラケンは『ふむ…』と心で呟きながら脳裏に和泉を浮かべた。
女でありながら幼馴染や大切な人間を守る為に命を張ろうとしたり、怪訝そうな表情でマイキーの行動を止めたりした彼女を。
子供っぽい所があるマイキー。
もしや彼女がいれば自己中心的に突っ走るマイキーを泊めてくれるのでは…とドラケンは考えた。
「……良いんじゃねぇの?お前がそう思うなら欲しろよ」
「ケンチンならそう言ってくれると思った♡」
「ていうかマイキー。お前何処に行くつもりなんだよ」
「兄貴の墓〜!タケミっちと、イズミっちに話してたら会いたくなってさぁ」
死んだ兄と似ていた武道。
そしてその兄の大切な人であった女性に似ている和泉。
マイキーは2人と話していれば無性に会いたくなってしまった。
「にしても…イズミっちさ鳴海さんと同じ苗字だったな」
「うん…。なんか関係あるかもね」
目を細めたマイキーは兄の墓がある墓地に到着すると、愛機を駐車場に止めてから降りる。
ドラケンもそれに続いて降りてから、2人で兄の墓石へと足を進めた。
墓石に近づく度にある匂いがした。
少し苦い煙草の匂いとそれに交わって香ってくる線香の匂いが鼻腔を擽る。
夜遅くだが誰か来ているのだろうかと2人は考えた。