The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「というか、けーすけくんもサボり?制服は着てるけど」
「学校は行ったけど、うぜぇ奴いたから抜けてきた」
「……へぇ。留年気にするならサボらない方がいいと思うけどな、俺」
なんて言ってみればけーすけくんは『うっ』と言いながら、眼鏡をかけた。
本当にその眼鏡と髪型だど別人に見えるのが驚きでもあるが、やっぱ1番驚いたのは留年した事と涼子さんが泣いた事だろうか。
「サボった分、家で勉強すれば良いだけだろ」
「そっか。じゃあ頑張れ」
「………和泉、頼みがある」
「ん?」
「べんきょー、教えてくれ…」
小声でそう言われて、俺は思わず『うん』と答えていた。
そして現に今俺はけーすけくんが住んでいる団地に着ており、階段を登っている最中。
まさかけーすけくんに勉強を教えてくれと言われるとは思っていなかった。
声かけられて会えた事さえ驚いたのに…。
もしかして俺が正式に東卍メンバーと知らないからだろうか、それとも佐野先輩とも普通に接しているのだろうか。
そう思いながら前を歩くけーすけくんの背中を見つめた。
「オフクロ、今日仕事だからいねぇと思うけど…」
「そっか」
「そういえば和泉が家にくんの久しぶりだな」
「…そう、だったね」
真一郎くんが亡くなってからは交流が無くなった。
いや、俺が避けていたのもあるしけーすけくんとは連絡が繋がらなくなったのもある。
この団地には何回か来たけど本当に久しぶりだ。
「どーぞ、相変わらずせめぇけど」
「お邪魔します。……やっぱ涼子さん居ないか」
「うるせぇの居なくていいわ」
「それ涼子さんの前で言ったら殴られるよ」
そう言いながら部屋に入れば、昔とそんな変わらないけーすけくんの部屋があった。
本はなんか増えてるけど、相変わらず押し入れで寝ているみたいだし。
「座れよ」
「ん」
畳の上に座ると、けーすけくんは折り畳み式の机を広げてその上に教科書はノートなどを並べていく。
使われた形跡がある教科書は皺が出来ていて、恐らく必死に勉強しているのだろうなと分かる。
ノートもちゃんと纏めてあるが…。
所々漢字がおかしくなったり誤字があったりするし、答えが違ったりもする。
「……何処、教わりたい?」
「…数学」
「数学ね…。けーすけくん、今までのテストとか残ってる?」