The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
声をかけられて振り返れば知らない奴がいた。
七分分けして後ろで束ねている髪の毛と、牛乳瓶の底かと思うぐらいの眼鏡をかけて知らない学校の制服を着た男。
俺、こんな見た目の知り合い居ただろうか…。
「あ〜…この格好で会うのは初めてか」
「は?」
「これで分かるか?」
そう言いながら男が眼鏡を外した瞬間驚愕した。
いや驚愕というか絶句というか…今まで以上に驚いたというか…言葉に出来ない。
「け、けーすけくん!!??」
「よぉ」
「え…は?え?」
なんでそんな姿をしているのか。
というか東京卍會から抜けたのに普通に声を掛けてくれるのかと思いながら眉間の皺を揉んだ。
驚きと色々でパニックになりそう。
けーすけくんはそんな俺を見ながら笑っていて、その表情が何時もと変わらなかった。
昨日の集会で見た挑発的な顔じゃない。
「なんで、そんな姿を…?」
「ガリ勉の格好してれば、少しは頭良くなると思って」
「ならないよ」
「………マジか」
「なんで…頭良くなりたいわけ?そんな格好までして」
「……留年してんだよ」
「は?」
「オレ、留年してんだよ」
「………ん?」
留年って…あの成績悪すぎて学年を進級出来ない事だよな。
高校とか大学とかではよく聞くが、中学生で留年てあるのだろうか普通…。
今まで聞いた事がないのだが。
「留年してるからオレ、中2なんだよ」
「……俺と同じかよ」
「だから…これ以上は留年出来ねぇんだよ。またオフクロ泣かせちまう」
「あの涼子さんを泣かせたのかよ…」
けーすけくんのお母さんである涼子さんは、性格がよくけーすけくんと似ている。
そんな涼子さんを泣かせるとはかなりのモノだし、留年して同じ学年という事に驚いてしまった。
確かにけーすけくんは馬鹿だ。
かなりの馬鹿ではあるが、留年する程の馬鹿とは思わなかったけどガリ勉姿になれば頭良くなるという発想からもう馬鹿である。
「……まぁ、それは置いといて。話しかけてくれないと思ってた…」
「あ?」
「東卍抜けたから……。会えないと思ってたし、声なんてかけられないと思ってたから。正直嬉しい」
「……東京卍會抜けても、オマエとは幼馴染のままだろ」
それが嬉しいんだよ。
抜けたとしても幼馴染だからと声を掛けてくれるのが凄く嬉しいんだ。