The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
「あとね、イズミっちは兄貴の恋人に似てんの」
「恋人に…」
「そー。女だけど兄貴のチームにいてさ、大切な人間守る為ならば自分の体や命を顧みない。仲間や大切な人達の為に命張る人だった。その人も亡くなったけどね」
まさか。
まさか…と和泉は頬に汗を浮かべさせていれば、マイキーが『降りる』と言い出し武道が自転車のブレーキをかける。
そしてドラケンもブレーキをかけた。
「ん、イズミっち」
すると先に自転車から降りたドラケンは、未だキャリアーに乗っていた和泉へと手を差し伸ばす。
それはまるで絵本に出てくる王子様が、馬に乗っているお姫様を降ろす時のようなワンシーン。
だが和泉はそれにときめくような女心は生憎持ち合わせていない。
なんなら突然の女扱いに無表情へと変わった。
「1人で、降りれますが?」
「お前可愛げねぇな」
「男装してる女に可愛げを求めないでください。でも、ありがとうございます」
和泉はドラケンの手に自身の手を重ねると、キャリアーから降りた。
そして河川敷にいるマイキーへと視線をやれば、夕日にピンクゴールドの髪の毛が照らされいる。
「今って不良がダセーって言われる時代だろ?」
武道は『そういえば』と思い出した。
この頃から不良はダサいや白い目で見られる事が少なくなかった時代。
和泉も武道達といれば白い目を向けられている事もあり、修二と居ると陰口を叩かれているのを耳にした事がある。
今の時代はそうなのだ。
「兄貴の世代はさこの辺りもすっげー数の暴走族がいてさ。その辺をチョッカンコール鳴らして走ってた。みんな肩肘張ってさ喧嘩ばっかりして、でも自分のケツは自分で拭いて。そんな奴らがなんでダセーんだ?」
ふと和泉はとある大切な2人を思い出した。
ダサいやかっこ悪いなんて言われても、大切な人達は笑い飛ばしたり気にしてもどうやったらカッコイイと言われるかなんて考えていたのを……。
「だからオレが不良の時代を創ってやる。オマエらもついてこい、オレはオマエらが気に入った。花垣武道、神澤和泉」
和泉は瞬き1つする。
そして懐かしさが込み上げてきて、マイキーの後ろ姿が懐かしい人と重なり目頭が少し熱くなっているのを感じてグッと堪えた。