The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
ー三人称ー
大切なんだね。
その言葉に和泉は数秒黙り口を動かすと、肯定する『そうですね』という言葉を呟いた。
彼女のその言葉を聞いた武道は何処か嬉しくなり、口をムズムズと動かす。
「そういえばさ、なんでイズミっち男装してんの?」
「家庭内事情です」
「どーいう事情?」
「親族に男装するよう、言われているだけですよ」
マイキーはその言葉を耳にすると、首を横にして目線を後ろにやってみる。
キャリアーに横向きで座っている彼女の表情は無であり、感情が見えない。
すると視線がぶつかるが和泉の群青色の瞳はまるで『これ以上踏み込むな』と言わんばかりの瞳である。
探られたくないのかとマイキーは溜息に近い吐息を吐いた。
「ふーん。そっかぁ」
「まぁ色々事情はおありのようで…。にしても、フツー男相手に殴り掛かるか?」
「あれはお2人が悪い気がしますけど」
「言葉に棘があんな。オレらの事嫌いか?」
「嫌いでも好きでもないですね」
ハッキリと言う幼馴染に武道は内心ハラハラしており、少し青ざめた表情。
自転車を漕ぐ為に視線は真っ直ぐにしているが、後ろから気になり過ぎてチラチラ視線を後ろへと向ける。
「あの。なんでオレの事なんか気に入ったんですか?和泉は分かるかもしれないけど…」
「……くっだらねー質問」
「スイマセン」
話題を変える為と気になっていたのもある為、武道は質問をしてみたがそう返答をされる。
くだらないかもしれないが気になる…そして和泉も少し思っていた。
何処で武道と自分を気に入ったのだろうか。
あの時自分はかなり失礼とも言える態度を取っていたのにと考える。
「オレ、10コ上の兄貴がいてさ…死んじまったけどネ。無鉄砲な人でさ、自分より全っ然強ぇ奴にも平気で喧嘩挑んじゃうの」
「へー。かっけぇ人だったんスね!」
「タケミっち、兄貴に似てる」
「へ!?そんな、かっこよくねぇっスよ!!どこを見たら!」
「確かにタケミっちみたくダサくねーな」
「……それはヒドいっす」
そんな2人が会話をしている時和泉は目を見開かせていた。
マイキーの『10コ上の兄貴』と『武道と似てる』という言葉は和泉の知人に当てはまる。
しかもその知人も既に亡くなっているのだから。