The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
寂しそうで悲しそう。
けーすけくんと佐野先輩の間にどんな絆があるかは俺は知らないけど、二人は確か幼馴染の筈。
幼馴染が去っていくのは誰でもやさり寂しいだろうと思い佐野先輩の横顔を見る。
月を見上げるその顔は何時もの無邪気さはない。
置いてきぼりになったような子供にも見えるし、憂いを纏う大人にも見えた。
「夢への道は遠いな」
「マイキー君…」
「頼みがあるんだ、タケミっち。タケミっち、大事な話があるんだ」
「……はい」
「オレ幼なじみがいてさ。ただ家が近所ってだけで別に仲良くはなかった。しょっちゅう喧嘩ふっかけてきてさ、その度にボコボコにしてやった」
「マイキー君に何度もケンカ売るなんて…とんだおバカさん」
恐らく、いや絶対にその幼馴染はけーすけくんだろ。
というか毎度喧嘩売ってたのかよ…と、意外な話を聞いて呆れたように溜息をついた。
そして三ツ谷先輩はそんな俺を見て苦笑を浮かべている。
「うん。それがさっきオマエの事を殴った奴」
「……二人に殴られたんスけど…どっちスか?」
「壱番隊 隊長 場地圭介。何考えてっかわかんねーだろ?アイツ」
「はい…なんで殴られたのかもわかんないっス」
「ハハ。昔っからそーなんだよ。眠いってだけですれ違った奴殴るし、ハラ減ったら車にガソリン撒いて火ぃつけちゃうし」
「へ…へー」
「待って…けーすけくんそんな事してたの?俺知らないんだけど……」
「してたな…」
今サラッととんでもない事を聞いた。
確かにちょっとけーすけくんは無茶苦茶な事もあるし、手が出るのは早いけど…。
腹減って車にガソリン撒いて火つけた話は初耳である。
これけーすけくんのお母さんの涼子さん知ってるのか?知ってたら多分かなりの雷が落ちてるはず。
なんて唸りそうなぐらい考える。
「とにかくあんな奴でさ、東卍の“創設メンバー”なんだ」
「創設…メンバー…」
「東卍はさ、中一の時のオレとドラケン。三ツ谷、パーちん、場地……」
「その5人で…?」
「………ああ。コイツらが集まって旗揚げしたチームなんだ」
隊長格の人間のほとんどが創設メンバーなのか。
そう思いながら三ツ谷先輩の顔を見上げれば、何故か複雑そうな顔をしていた。
どうしたのだろうかと暫く見ていれば、視線に気付いたのか困ったような笑顔を浮かべる。