The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「何なってんだ!?タケミっち!?」
「え……!?」
龍宮寺先輩の声で振り返れば、稀咲の頬は殴られているような痕があり武道の拳は握られていて若干赤くなっている。
つまり武道が稀咲を殴ったという事だ。
「おい何やってんだアイツ!?」
「やばくね?」
「幹部に殺されんぞ」
「オイ!!誰だテメェ!?」
ドッと冷や汗が流れる。
武道の顔を見れば思わず殴ってしまったという感じなのだろうけれど、この場で殴るという行為が非常にやばい。
しかも武道は正式メンバーじゃないのに、参番隊隊長を殴った…下手したら敵認定される可能性があるのだ。
そんな中で殴られた稀咲は静かに口の中の血を吐き出していて、周りは武道の行為にザワついている。
幹部メンバーも目を見開かせていた。
「東卍でもねぇテメーが何やってんだ!?タケミっち!!!任命式潰す気か!?」
「ドラケン君…」
「どういう事だタケミぅち!?」
「テメェ、マイキーの顔に泥塗りつもり!?」
「違うんスよみんな…オレは…オレは」
龍宮寺先輩と武藤先輩にスマイリー先輩…そして三ツ谷先輩が武道の目の前に立つ。
これは本当にやばいと思い慌てて走ってから武道の腕を引っ張り、自分の背後にやった。
「和泉!?」
「この阿呆っ!何してんだよ!」
「お、オレ…」
「……分かってる」
憎い相手を目の前にして殴りたくなる気持ちは分かる。
そして武道は無意識にその行動をしてしまったのも、顔を見れば分かった。
優しい性格だから稀咲が許せなかったのも分かる。
だけど時と場所が悪かった。
任命式であり、幹部メンバーを前で稀咲を殴ってしまったのだ。
しかも幹部メンバー全員の声に怒りが纏っている。
「イズミっち、どけよソコ」
「申し訳ないですが無理ですね」
「は?」
「ぶっちゃけ、俺は任命式より幼馴染の方が大事なんで。それにまだ武道は正式メンバーじゃないから、佐野先輩の顔に泥は塗ってないと思いますけどね」
苦しい言い訳かもしれない。
逆に正式メンバーじゃないからやばいというか、正式メンバーじゃないから大丈夫というか…なんとも言えない立場過ぎて……。
だけど俺にとって任命式より武道の方が大事なのは事実。
(最悪この4人相手する事になるのか?イケるかもしれないけどちょっとキツいぞ、コレ…)