The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
「東京卍會(ウチ)はこれから“芭流覇羅”とぶつかる!!新興勢力芭流覇羅は愛美愛主なんて目じゃねぇほどデケぇチームだ!勝つために東卍も勢力を拡大する!」
やっぱり芭流覇羅とぶつかるのか。
なんて思ったらなんとも言えない複雑な気持ちになってきた。
まだ正式メンバーじゃないから抗争に参加する事はないかもしれない。
それでも…複雑な気分にはなるのだ。
「ここにいる稀咲鉄太は愛美愛主でオレらの世代をまとめてた男だ。芭流覇羅とモメる為には稀咲が必要だ!!参番隊隊長は稀咲鉄太!!覚えておけ!!!参番隊隊長任命式を終わる!」
それだけを言うと佐野先輩は背中を見せた。
風で靡く特攻服を見ながら、どうしても芭流覇羅に勝つには愛美愛主のメンバーだった稀咲が必要なのだろうかも思ってしまう。
だってソイツは未来で…佐野先輩が大切にしている東京卍會を凶悪化させるのに。
それなのに…そう思っていると佐野先輩が振り返り目が合った。
「神澤和泉!」
「っ…はい!」
「この後オレの所に来るように。良いな?」
「……分かりました」
何故呼ばれたのか分からずに驚いていれば、周りも少しザワついていた。
そりゃそうだろう…正式メンバーじゃない人間が総長に呼ばれたのだから。
また歩き出した佐野先輩を見ていれば、さっきまで座っていた稀咲が立ち上がっていた。
そして佐野先輩を背中を見ると呼び止めて深く頭を下げる。
「総長!ありがとうございます!!」
「おう」
「イズミっち。総長の所早く行け」
「え、あ…はい!」
龍宮寺先輩に『行け』と言われて、慌てて階段を登っていれば稀咲と目が合った。
まとわりつくようなその視線が相変わらず気持ち悪くて、眉間に皺を寄せながら睨み付ける。
(さっきからなんだ…コイツ)
訳が分からない。
そう思いながら龍宮寺先輩の横を通り過ぎようとしていれば、龍宮寺先輩は佐野先輩を見ながらボソッと呟いた。
「何、考えてんだが。ウチの大将は」
その言葉はまるで、龍宮寺先輩も稀咲が隊長になった事を納得していないかのような佐野先輩の行動が理解出来ないかのような呟き。
なんで佐野先輩はわざわざ敵チームだった稀咲を取り入れたのだろうか。
何か考えがあるのだろうかと思っていれば後ろで『ゴッ』という鈍い音が聞こえてきた。