The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第4章 血のハロウィン
その通り慣れないのだ。
鳴ねぇが死んで、秋にぃが少年院に入ってから俺が出掛ける時に必ず『行ってらっしゃい』と行ってくれる人はいなくなってしまった。
吉塚さんは仕事が忙しいからなかなか言えず、でも鉢合わせした時は行ってくれる。
でも三ツ谷先輩の家に行けば『お帰り』『行ってらっしゃい』と言ってくれる。
それが慣れなくて照れくさくてムズムズしてしまう。
「慣れません……ね。お帰りも行ってらっしゃいも暫く聞かなかったから」
「これからずっと言われるんだ。そのうち慣れるよ」
「慣れますかね…」
「慣れる。というか慣れような?照れるのも可愛いけど、他の奴にその顔見せたくねぇわ」
サラッと、サラッとこの人は何を言ってるんだと顔が赤くならないように何とか耐えた。
あれから何とか気持ちに蓋をしようとしていたが、その度に三ツ谷先輩は期待されるような事をしてくる。
それがどれだけ辛いか。
この人は分かってないだろうし、別に分かって欲しいとも思っていない。
「ほら、早く行きましょう!」
「ははは!分かった、分かった。ほら、メット」
「思ったんですけど…。なんで俺だけにメット渡すんですか?前に八戒乗せた時は渡してなかったし、三ツ谷先輩自体付けてないですけど…」
毎回そうだ。
俺がタンデムに乗る時だけメットを渡してくるので、よく何故だろうと思いながら付けていた。
「和泉に怪我させたくないからに決まってるだろ?八戒の奴は別にいいけど」
「……たまに思うんですけど、三ツ谷先輩って八戒に対してたまに扱い酷いですよね」
「そうか?」
「そうですよ。たまに八戒泣きそうになってますし」
幼馴染相手だからなのか…たまに三ツ谷先輩は八戒に対しての扱いが酷かったりしている。
その時の八戒の顔が面白くて笑ったりしていればたまに怒られてしまう。
だが幼馴染相手に酷いのはオレもかもしれない。
武道に対したり修二に対したり…たまに武道から『扱い酷くない!?』と言われたりもした。
(修二…そういえば、あれから修二の奴と連絡取ってないし取れないな…。音信不通だけど、電話番号は使われてるみたいだし……)
あれから修二はどうしているのか分からない。
心配ではあるが、きっとアイツは俺の心配なんて他所に芭流覇羅で活動しているのだろう。