The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
静かにそう言うドラケンに武道はやはり、このドラケンが人を殺したとは信じられなかった。
過去で彼といた時もそうだ…この人は人を殺せるような人間じゃないと…。
だがドラケンが人を殺したのは事実。
「東卍がこんな事になっちまったのも…オレのせいだ。オレが“アイツ”を止められなかったから」
「“アイツ”?」
「……東卍か…ガキの頃はよかったな。ただチームをでかくするって突っ走ってよ。喧嘩喧嘩で毎日が祭りみてぇで。東卍はオレの全てだった」
その言葉に武道は笑みを浮かべた。
楽しそうに東京卍會の話をするドラケンは何一つ過去と変わっていない。
あどけない少年のままで、瞳は少し輝いていてそれが武道は少し嬉しかった。
「もう1回人生やり直してもオレは同じ生き方を選ぶ。後悔はねぇ」
(やっぱりドラケン君はドラケン君だ。変わってない)
人を殺したと聞いたものだから、もしかしたら性格や何かが変わっているのかもしれない。
そう心配していたが彼はやっぱり何と変わっていなかった。
東京卍會を大切に思っていて心から大事にしている。
そう思っていたがふとドラケンが纏う空気が変わった。
さっきまでの楽しげな雰囲気は無くなり、何やら重い空気になっていく。
「…けどよ」
「……けど?」
「本当にもう一度人生をやり直せるなら、一つだけやんなきゃいけねぇ事がある」
「え?」
「稀咲を殺す!」
ドラケンの目は闇のようだった。
怒りと憎しみ…憎悪がその瞳を塗りつぶしているかのようでゾクッと武道の背筋が凍ったのと同時に『稀咲』という苗字に反応する。
(稀咲!?稀咲鉄太!?)
「稀咲ってあの…!?」
その時武道の言葉を遮るかのようにブザーが鳴った。
面会の時間が終了したようで、警察が入ってくると『時間です』とだけ言う。
ドラケンはゆっくりと立ち上がると扉の方へと向かった。
「タケミチ、東京から離れろ」
「え?」
「殺されかけたんだろ?だからここを訪ねて来た。稀咲にとって人を殺すのは虫を殺すぐらいの事だ。それとイズミっち…死んだってな……オレの代わりに墓に花を添えてやってくれ」
「ちょっと待って下さい!!なんで!?なんでオレが命を狙われるんですか!?なんで和泉は殺されたんですか!?」