The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
ボタボタッ……とアスファルトに血が落ちて染まっていく。
そして和泉の体は揺れてその場にうつ伏せで倒れ、発砲した男はそれに合わせるように自分の頭を1発の弾で撃ち抜きその場で倒れた。
「和泉っ!!!和泉!!!」
「至急救急車を回してください!場所は!!!」
「和泉!和泉!!」
直ぐに駆け寄った武道は倒れた和泉を抱き起こし名前を呼ぶと小さく『ゲホッ』と咳き込む音が聞こえる。
体を見れば2箇所穴が開いているように見え、そこからスーツが赤黒く染まっていた。
そしてぬるっ…とした感触が手に伝わる。
武道は抱き起こす際に彼女の背中に触れた左手を見れば、真っ赤に染まっていた。
「あっ……あ」
「たけ、みち…」
「ち、血が……。っ、ナオトっ!救急車っ!」
「今呼びました!!和泉さん、大丈夫ですか!?気を確かに持ってくださいね……」
ナオトはそう言いながら武道の横に駆け寄りしゃがみこむ。
止血をしないといけないと思っていれば、視界の中にアスファルトの上をじょじょに真っ赤な血が流れているのが分かった。
(出血が…酷い……。早く、止血しないと…救急車が来ないと和泉の命が……)
真っ青な顔をしながらもナオトは止血をしようと、傷の上を手のひらで抑える。
だが出血が止まらず、そして発砲音を聞きつけた葬儀場にいた人々が騒ぎながら出てきていた。
「和泉っ、大丈夫だからな。ナオトが救急車呼んでくれたからっ!!」
「はっ……たけ、みち…」
「なに?なに?和泉」
「12年前……っ、ハロウィンの時……」
「ハロウィン…?」
「ハロウィンの時に、全てがっ…げほっ!はぁ…はっ、全てが変わったっ…」
荒い息をしながら和泉は小さいな声で時折咳き込みながら、武道に何かを伝えようとしていた。
12年前のハロウィンに何があったのか、武道は目を見開かせながら和泉を見つめる。
「ハロウィンで、東京卍會は…稀咲に、飲み込まれたっ…」
「ハロウィンな…分かったから、和泉…喋るな。血が、血が止まらないからっ……!傷に障るからっ」
すると和泉は微笑んだ。
柔らかく優しく目を細めながら微笑み、震えさせながら武道へと手を伸ばす。