The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
和泉の優しさなのだろう。
これ以上東京卍會に関わって苦しい思いや悲しい思いをしてほしくなかった…知らずに幸せでいてほしかった。
武道は彼女の優しさに責める事なんて出ずに唇を噛み締めるだけ。
「結局ボクらは何も変えられてなかったワケですね…。何やっても無駄。結局運命は変えられない」
「それは違うぞナオト!」
「武道…」
「ドラケン君を救っても何も変わらなかったのは、そへが原因で東卍が凶悪化したワケじゃないってことだ。ヒナが目の前で死んだ時、燃える炎を見ながら一つ分かったんだ。元を正さなきゃダメだって事が!」
元を正す。
どういう事なのだろうかと和泉とナオトは武道の顔を見た。
何かを決めた真剣な表情とその眼差しに、普段は頼りなさは一切見えない。
昔からそうだ…コイツは何かを決めた時は逞しく見えるんだよな……そう和泉は思い出し小さく笑みを浮かべた。
頼りないだけじゃない幼馴染なのだと思いながら。
「東卍を潰す!その為にオレが過去の東卍のトップになる!」
「ハハ。何を言い出すかと思えば」
「本気だぞ」
「そんな無茶な話…」
「無茶でいい!ヒナを救えるならどんな無茶でもする!!」
無茶な事を言っているのは自分でも分かっている。
だが武道はそんな無茶をしたって、日向を救い生きてほしいのだ。
涙を流す武道を見てからナオトは茶化すような顔はしなかった。
「無茶苦茶な発想ですね。でも、ありがとう」
苦しそうな表情をしていたナオトが少しだけ、その表情を明るくさせた。
そして純粋なお礼を言われた事に武道は少し照れたような表情を浮かべる。
「落ち込んでるのがバカらしくなりました。アホすぎて」
「確かにアホすぎて悩むのが馬鹿らしくなるよねぇ」
「ねぇねぇ、なんでいつも一言多いの?2人して」
「一言多いか?」
「多い!!」
相変わらずキツい言い方をしてくる2人に、武道は何時もこうだなぁと溜息をつく。
ナオトも和泉も2人とも息が合うなと思いながら、3人は1時帰宅する事にした。
静かな葬儀場の廊下を歩きながら、和泉は眉間に皺を寄せていた。
思い出しているのは日向が死亡した日の、あの煙草の匂いと声が引っかかって仕方ない…そう考えている時和泉のスマホが着信音を鳴らした。