The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
その後落ち着いたのか泣き止んだナオトは外の椅子に座りながら項垂れ、武道と和泉は少し離れてから庭園を見ていた。
会話は無く沈黙の中、時折風で揺らされた葉の音が聞こえてくるぐらい。
「上手く…言ったと思った……」
「うん…」
「また…ヒナ、死んじまった…」
「ん……」
それだけの会話の後はまた沈黙が流れる。
和泉はただただ唇を噛み締め、真っ白になるぐらいまで手を握り締めていた。
また日向が死んでしまい、また武道の心に深く傷が残った事が苦しくてたまらないのだ。
彼にかける言葉が見つからない。
どうすれば良いのか分からず、歯痒さを感じている時足音が聞こえてきた。
「花垣武道君…と神澤和泉君…?」
「あ…」
「…あ」
「日向の母です。2人とも、大人になったわね」
声をかけて来たのは日向の母。
彼女とよく似た優しい笑顔を浮かべながら、懐かしげに2人を見て和泉達は彼女に向かって頭を下げた。
「コレを…武道君に」
「……自分に?」
日向の母が武道に手渡したの白いハンカチ。
何かが包まれているようで、不思議そうにしながらハンカチを開いていき武道の動きが止まった。
そして和泉は目を見開いてから、泣きそうな顔になり顔を背ける。
「コレ…」
「お気に入りだったみたい。いつも大事そうに身につけてたのよあの子。あなたのプレゼントした物なんでしょう?」
ハンカチで包まれていたのは焼けて少し焦げてしまっていた四葉のクローバのネックレス。
武道が未来に戻る前に日向にプレゼントとしていた物であった。
ずっとずっと日向は身につけていたのだ。
武道から貰った…大好きな人に貰った大切な物だと、和泉にも母にも嬉しげ言っていた。
「ヒナ…」
「あの子はあなたの事が大好きだったのね…。それと和泉君にはコレ」
「俺、ですか…?」
「ええ。このお守り…あの子が就職する時に貴方があげたお守り」
所々燃えて溶けてしまっている無病息災のお守り。
これは和泉が、日向の身に何も怒らないようにこの世界線では死なないようにとあげたお守りだった。
「このお守りもあの子大切にしていたのよ」
「……橘…」
「2人とも、ありがとうね。日向の傍にいてくれて」