The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
名前を呼ばれた。
その声は酷く懐かしくもう聞くことはないだろうと思っていた声。
何時も飄々としてあの懐かしい香りの煙草を吸っていた人物の声が和泉の名前を呼んだ。
「っ…!!」
急いで後ろを振り向くもそこには誰もいなかった。
ただ辺りにはあの煙草の匂いが残っているだけで、和泉の眉間にはシワがぐっ…と寄る。
何か嫌な予感がする。
胸騒ぎと腹の奥底から湧き上がるような気持ち悪さを感じでいれば、スマホから『社長?』と呼ばれた事で電話中だったのに気付く。
『社長どうかされましたか?』
「いや……なんでもない」
『社長…やっぱり明日明後日ぐらいに休み取られた方が良いですよ。社長、社畜並に働くから…』
「誰が社畜だ。まぁ…その辺りで1回休み取るかな」
『そうされた放が良いですよ!うちの会社くらいですよ〜社長が社畜って』
「だから…社畜言うなって言ってんだろ。社畜言われるほど働いてない」
電話をしながらまた歩きだした時だ。
ドォオオン!!!!と背後で爆発したような音が聞こえ、驚いて振り向けば火が立ち上っていた。
真っ赤な炎と灰色の煙…直ぐに辺りが焦げ臭いもので覆われて和泉は目を見開かせる。
東京で爆発音と火事。
爆発したのは2台の自動車であり、1台の車が軽自動車に突っ込むようにあり中からは男性の焼死体。
そして突っ込まれた車からは女性の焼死体。
死亡した男性の名前は千堂敦……女性は橘日向であった。
車の爆発事件はニュースで大々的に取り上げられた。
そして、変えることが出来たと思ったこの現代で千堂と日向が死亡したのであった……。
「ヒナ…」
「姉さん…なんで…」
「橘…」
故 橘日向葬儀式場
そう書かれた看板が立てかけられた建物内では、日向の葬式が執り行われていた。
そして葬儀後武道と和泉にナオトは、人が居なくなった待合室に向かいナオトが崩れ落ちた。
「うああああああ!!なんでだよ!?うまくいったハズなのに!!!」
「…ナオト…」
ナオトの泣き叫ぶは待合室に響き渡った。
上手くいったと思っていた中、日向はこの世から去ってしまいまたあのタイムリープ前になってしまったのだ。
そんな泣き叫ぶナオトの背中を武道な目に涙を浮かべながら見て、和泉は唇を噛み締めていた。