The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
「すいません?」
「いいよ。“譲れねぇもんがある”今時女にそれ言う奴いねぇぞ?昭和だな。それに、大切なモンの為らなら命張れる奴もそういねぇよ。ビッとしてたぜ?」
褒められた?
俺はそう思いながら首を捻りながら、どうやらこの2人は女に手を出すような最低な輩ではないようだ。
それに凄んだり殴りかかってきた人間に、怒ることなく平然と笑っている姿。
どうやら俺が思っていたより、佐野と龍宮寺は悪い人間ではないのかもしれない。
「あれ?タケミチ君、和泉君。この人たちって…」
「あー…」
「えーと…」
❈❈❈❈
「ごめんなさい!!」
昇降口前で橘の謝る声が響いた。
あの後2人で説明すると橘は顔を一気に青ざめさせて、平手打ちした佐野へと頭を下げたのである。
「私勘違いしちゃって!」
「いーよ別に。すげービンタだったなぁ」
「すいません!!」
謝る橘に佐野と龍宮寺は笑い声を響かせた。
怒ってはいないようで、なんなら楽しげにしているのだから驚いたものだ。
普通ならば勘違いでされたら怒るものだ。
なんなら殴り返してくる人間もいるが、この2人はそうじゃないのだから少しだけ見方が変わってくる。
「好きな男の為に頑張るのはいいけど、無茶はダメ。相手が相手なら大変な事になっちゃうよ?」
「ハイ!」
会話をしている2人を見ていれば、視線を感じて後ろを振り向いてみる。
すると後ろには龍宮寺の姿があった。
「イズミっちって、空手とか習ってたか?」
「習ってはないですが?」
「そっか。にしてもさっきのパンチ凄かったな、まだ腕ビリビリしてる」
「それは…すみませんでした?」
「疑問形かよ!お前面白いな」
何処か面白かったのだろうか。
俺は顔を顰めながら龍宮寺から、橘の方へと視線をやっていればまだ佐野に頭を下げていた。
そしてちょっと申し訳なさそうな表情をしながら、歩き出して武道の方へと視線をやる。
恥ずかしさが残っているのか頬が少し赤らんでいる。
「ヒナ、行くね!」
「え?デートは?」
「今度でいいよ。せっかく友達が遊びに来てくれたんだし」
「友達ではないけどな…」
「イズミっち、お前はっきりと口に出すしぎじゃねぇ?」
でも友達ではないだろう。
俺は別に友達になった覚えはない…と思いながら目を細めた。