The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
怒気を孕んだ目で見下ろしてくる龍宮寺。
だがそれも全然怖くない…もっと恐ろしい人間はこういう目なんてしていない。
「大切な人間をもう守れないのは嫌だし…」
「あ?」
「あーあ。せっかくダチになれると思ったのにザンネン♡」
すると先程まで黙っていた佐野がゆっくりと体を此方へと向けていた。
なんて言ってくるかどう動くかと握っていた拳に力を込めながら、視線を向ける。
もしここで一悶着起きそうならば、多分武道と橘を守れるぐらいなら出来るだろう。
佐野と龍宮寺がどれだけ喧嘩が強いかどうかによるが…と冷静に考える。
「さて、どうやって死にてぇ?」
笑みを消した表情でそう聞いてくる佐野に、少し寒気に近い感覚を覚える。
だが武道も俺もここで脅されて引くような人間ではない。
「二度と人前に立てねぇーツラにしてやるよ」
「一つだけ約束しろや」
「ん?」
「ヒナと和泉には絶っ対ぇ、手ぇ出すなよ」
その言葉に思わず目を開かせた。
昔小さい頃に喧嘩を吹っかけられた時、武道がそう言ったことがありそれを思い出してしまう。
喧嘩が特別強くない。
なのに俺を守ろうとしていたし、今も守ろうとしてくれたいるのが嬉しかった。
(でも守られるだけなのは嫌だ。もう…二度と)
守られるだけの人間ではない。
大切な人を守れるような人間になるのだと…あの人を無くした時からそう決めているのだ。
そう思っていると佐野が拳を握り武道に殴りかかろうとした。
「は?知らねーよ」
「うっ」
そして俺も同じように拳を作ると、武道が殴られる前に殴ると自分に言い聞かせて佐野へと殴りかかろうとした時である。
「なーんてね」
「……へ?」
「……は?」
「バカだなータケミっちにイズミっち。あ、イズミっち怖いから拳下ろしてよ」
佐野が武道を殴らなかった。
そして俺は拳を佐野の顔の横にピタリと止めて、困惑していればチョンチョンと手を突かれる。
色々困惑しながらも武道を殴らないならば…と思いながら拳を下ろせば佐野はニコニコと笑っていた。
さっきの表情と打って変わって笑顔である。
「女に手ぇ出すワケねーじゃん」
「タケミっち、イズミっち…。オレ相手に凄んだな?しかもイズミっちはオレに殴りかかってきたし」
「す…すいません」