The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「ナオトは会えるよ?弟だし。でもオレは赤の他人だから。それに和泉とは10年前にオレが拒絶してから会えてないし…今更会うことなんて出来ねぇよ」
「タケミチ君…」
「幸せになっていてくれれば、それでいいんだ」
武道は尚更和泉とは会いにくい。
中学卒業してすぐ、逃げるように地元から出た時から和泉は心配してよく会いに来てくれていた。
だが自分は底辺な仕事をしていて、幼馴染の彼女は社長で劣等感を感じてしまい拒絶してしまい絶縁状態。
会える訳がないのだ。
自分から拒絶して絶縁状態になってしまっている状態なのに。
だが和泉と日向が仲良しという事は嬉しかったのと同時に虚しかった。
(12年…12年か…。12年前のオトコの顔なんて覚えてねぇよ普通。それに10年も会わず拒絶した幼馴染とか会いたくねぇよな…普通)
階段で降りながらそう考えていれば虚しさは強くなり、武道は壁を勢いよく叩く。
すると反響したのかその音がやけに響いた。
(あんなに頑張ったのに、何も変わってねぇじゃん。26歳童貞フリーターのままじゃん)
何も前と変わらないどうしようもない自分。
そんな自分が小学生の教師として働いている日向と、社長である和泉と会う?
「ヒナと和泉に会えるワケねぇじゃん。現代(いま)を変えたのに、なんでオレだけ何も変わってねぇんだよ…!?」
(タイムリープしてわかった…結局オレは根がダメなんだ。戻ろう…元の生活に戻ろう…)
両手をズボンのポケットに入れ、顔を下げてからマンションの出入口の扉を開ける。
その時入ろうとした人物とぶつかってしまった。
「キャ!」
「あ…すいまー」
適当に謝るか。
そう思いぶつかった自分の方へと目線をやった瞬間、武道は目を見開き固まった。
目の前にいる女性を見て、一瞬過去の日向と姿が重なるものだから…幻覚かと思ってしまう。
(あれ?幻覚?)
そこに制服を着た日向がいるように見える。
これは幻覚なのだろうか現実なのだろうかと、思っていたいれば…。
「タケミチ君?」
違う。
じわりと涙が浮かんだ瞬間、武道の脳裏には過去で過ごした彼女との記憶が蘇る。
沢山の日向と表情と沢山の声とかけてくれた言葉を、全部全部思い出したていった。