The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
サラッととんでも無い事を言うナオトだが、サラッと武道の怒りを流す。
だがナオトの『姉さんと和泉さんに会えるんだから』という言葉に、武道はまたあの緊張と嬉しが込み上げた。
(そうだ。ヒナと和泉に会えるんだ)
タイムリープする前は死んでいた日向と和泉。
今から2人に会えるし話せる…それがどれだけ嬉しいものなのか。
「ナオト……オレ今すげぇドキドキしてる。現代(いま)のヒナと和泉に会えるなんて。夢みてぇだ」
そんな彼の横顔を見てナオトは嬉しそうに笑う。
暫くしてからマンションに到着して、ナオトは地下駐車場に車を停めてからマンションの入口へと向かう。
段々とマンションに近付く度に、武道の心臓は馬鹿みたいに鳴っていた。
今から2人に会える事がこんなにも緊張するとは…。
「変わってるのかなー。ヒナと和泉」
「当たり前じゃないですか。姉さんは君と別れてから12年も経って、和泉さんとは確か10年以上会ってなかったんでしょ?立派な大人です2人共」
立派な大人という言葉に武道は息を飲む。
2人とも10年以上会っていなくて、別れて自分から切り離してとした。
「姉さんは今小学校の教師やってるみたいです。和泉さんは神澤家の会社を継いで今じゃ海外にも進出して、その名前はかなり有名らしいですよ。名前調べたら直ぐに出てくるんですから」
「へー」
(あれ?何勘違いしてんだオレ?)
日向と会えは喜んで抱きついてくれる。
和泉と会えば口は悪いけれどと喜んでくれるだろう。
なんて思っていたがそうじゃない、そうはならないだろうに。
(ヒナと和泉に会ってもそんな風になるワケねぇじゃん…)
ピタリと足が止まる。
会っても感動される訳がない…12年前に別れて、10年前に心配してくれた幼馴染を拒絶して感動の再会なんてなる訳がない。
「ナオト…」
「はい?」
「オレ…やっぱ会うのやめとく」
「え?どうしたんですか?急に」
「よく考えたらさヒナと和泉の命は救ったよ?でも和泉は知ってるけど、ヒナは救われた事とか知らないじゃん?」
その言葉にナオトはなんとも言えない表情になる。
確かに彼の言葉通り、日向は自分の命を武道が救った事は知らない。