The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
あの時は痩せ細り学生時代の時の姿と掛け離れていた千堂だが、今目の前にいる彼は中学生の時と何も変わらない姿で元気そうだ。
「早く入れよ」
その言葉に頷き彼の後を追うように中に入り、案内されたソファに座るよう促された。
武道はソファに座りながら千堂を見れば、あの時とはやはり全く違う元気そうな姿。
「掃除終わるまで待ってて」
「う…うん。……アッくん…もしかして美容師になったの?」
「あン?まだタマゴな!アシスタントやってるって言ったじゃん。毎日毎日コキ使われてる雑用!」
そうなのか…と思いながら武道は椅子に深く腰掛ける。
だが反社ではなく、こして美容室で働いている事は喜ばしかった。
タマゴという事はきっとここで勉強して美容師になるのだろうから。
だがやっぱり武道は戸惑いは隠れない。
本当に未来が変わっているんだな…と少し現実味がない気がして堪らなかった。
「今日オマエを呼んだのはさ、やっと来月から切らしてもらえるようになったからカットモデルになってほしくて。ホラ、初めての客!約束したろ?」
その言葉に武道は思い出した。
目の前で千堂が自殺して、タイムリープして過去に戻って直ぐに彼と約束したことを。
『よーし約束したかンな?』
『う…うん』
『一発目の客はオレな!』
『ハハ…』
千堂はあの約束を忘れていなかったのだ。
ちゃんと覚えていてくれて、こうして呼んでくれた事が嬉しくてまた武道の瞳は涙がじわりと浮かんでいく。
「なんだよ?忘れてんじゃねぇだろうなぁ?」
「バカ!忘れてねーよ!!」
「え?泣いてんの?」
「バカ!泣いてねーし」
「相変わらず泣き虫な?タケミチ」
ハハ!と笑いながら千堂はまた掃除を再開し、武道は涙を乱雑に拭いながら嬉しさが込み上げていた。
日向と和泉が死んだ事件もない、千堂は反社ではなくこうして美容室で働いている。
(やっと分かった。変えたんだ…現代(いま)を。本当に成功したんだ)
嬉しさは溢れ続け双眼からは涙が溢れ出し止まらない。
最悪な未来を避けれたのだ…あの最悪な未来を変えることが出来たのだと。
そう思っているとソファに置いていた武道のスマホが鳴り出した。
「タケミチ、ケータイ鳴ってるよ」
「…知らない番号だ。もしもし?」