The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
古くなって少し白くなっている傷。
武道は手の甲にある傷を見て、8・3抗争の時を思い出した今までのタイムリープは夢じゃない事が分かった。
(キヨマサ君に刺された傷!!)
タイムリープが夢じゃないならば、こんな所にいる場合じゃない。
武道はその場から立ち上がると、スタッフ室へと向かって走り出した。
「ちょっと花垣君!?」
「スイマセン!!今日休みます!」
「は!?」
直ぐにレンタルビデオ店へと出るが、向こうから店長の怒号が聞こえてくる。
だがそんなのを気にせずに武道は走り続けながら、今起きている現状にまた半分パニックを起こした。
(ワケ分かんねぇぞ!?そもそもオレはバイトをクビになったハズだ)
なのにバイト先で働いていた。
またあの嫌味を言って来る年下の店長がいて、タイムリープは夢だったと思ったが手の甲には傷がある。
一体どういう事なのだろうか。
パニックのようになりながら、スマホを取り出し連絡先一覧を見るがそこには登録したはずのナオトの番号がなければ名前も無かった。
「なんでナオトの番号が登録されてないんだよ!くそっ、何がどうなってんだ!!?ん?スケジュール通知…」
するとスマホの画面にスケジュール通知が現れ、そこには『美容院』と表示されていた。
普段は美容院なんて行かない武道の元に何故こんな通知が来たのだろうかと首を少し捻る。
「美容院?なんだコレ?」
不思議に思いながら、取り敢えず武道はスケジュールに書いてある住所に向かうことにした。
急いで走りながら向かい、住所先に着いた時は辺りは暗くなり夕陽が消えそうになっている。
「ここ?」
目の前には美容院。
だが今まで行った事もなければ知っている所でもなく、戸惑ってしまっていた。
すると美容院の扉が開き誰かが出てくる。
「お疲れ」
「お疲れ様です!!」
「掃除が終わったら戸締りちゃんとな。“千堂”」
「はい!!」
じわりと瞳に涙が溜まる。
悲しみよりも嬉しさ感動が武道を埋めつくし、目の前にいる人物を捉えた。
そして涙のせいで歪んで見えてしまう。
そこにはタイムリープ前に自殺して、助ける事も出来ずに死なせてしまった大切な友人。
日向と和泉と同じように助けたかった…。
「アッくん!!!!」
「おう。なんだよタケミチ?デッケェ声出すなよ」