The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
佐野先輩は俺の腕を掴んだまま歩き出すと、人気のない廊下の端っこまで歩いていく。
どうしたのだろうかと悩んでいると、突然壁に背中を押し付けられて佐野先輩の顔が間近にあった。
「さ、佐野先輩…?」
「コレ…誰につけられた?」
「え…」
彼の指が触れたのは三ツ谷先輩が付けたキスマ。
それをなぞるかのように触れていて、それを見てから佐野先輩の方へと視線をやれば眉間に皺が寄っていた。
そしてあまりにも顔が近いので思わず視線を逸らすようにしから、正直に言った方が良いのだろうかと悩む。
言ったら言ったで俺が恥ずかしい。
「誰に、つけられた?」
「え…えっと…」
「三ツ谷?」
「っ…」
「当たりか…」
すると佐野先輩はまたキスマをなぞるように触れてから、ポケットから何かを探っている。
そして取り出しのは絆創膏で、キスマの所に何も言わずに貼った。
「これから診察なんだろ。貼っといた方がいいじゃん?」
「あ、ありがとうございます…」
「ん。じゃあちゃんと診てもらいなよ」
「はい。それじゃあ……」
佐野先輩に頭を下げてから診察する為下の階へと向かう。
直ぐに診察してもらえたが、『何故直ぐに来なかった』と叱られてしまった。
どうやら傷がちょっと悪化していたらしい。
診察の間『傷が残るだろうに』や『全く』と医者はブツブツと言っていたので居心地が悪い。
そして薬局で傷薬等を受け取るように言われ、また診察来るようにねんをおされた。
「病院行くの面倒なんだよな…」
というかこの病院に来たくない。
何せこの病院の院長が分家の人間でもあるので、もし本家に報告されたら面倒なのだ。
「薬局行って…何処かブラブラするかな……」
薬局で薬を受け取り、さて何処に行こうかと思っているとポケットに入れていたマナーモードにしていた電話が揺れた。
また修二からだろうかとうんざりしながら携帯を取れば、着信が来ており相手は武道から。
「もしもし?武道?」
『もしもし。今、平気?』
「平気だよ。どうした?」
『オレさ、未来に帰ろうと思う』
その言葉に目を見開いたが、確かに龍宮寺先輩を救うというミッションは終えたのだ。
恐らく未来は変わっているだろうから帰って確認もしなきゃいけない。
それは分かっているが少し寂しい気持ちが溢れた。