The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「俺には、なにも…言ってくれなかった……」
その程度の絆だったのだろうか。
ずっとずっと幼馴染で傍にいて、何かあれば飄々としている奴だけど言ってくれた。
なのに今回だけは何も言ってくれなかった。
悔しい、寂しい、悲しい。
そしてアイツを引き抜いた奴が憎くて、唇を噛み締めて膝の上に置いていた拳を握りしめた。
「……そっか」
「すみません…色々と」
「イズミっちが謝る必要はねぇじゃん。逆にオレらが謝んねぇといけねぇよ。抗争に巻き込んだ挙句、イズミっちとタケミっちには怪我させたんだから」
「そういえば和泉、怪我平気なの?」
「大した傷じゃない」
「嘘言うな。深かったクセに」
横から咎めるように三ツ谷先輩に言われた。
そういえば、この中で唯一俺の傷を見ているのはこの人だけだ。
「え!?深かったのかよ!」
「結構血は出てたし、傷も深め。ソレ、跡残るぞ」
「マジか…」
なんて話をしているがやっぱり俺は三ツ谷先輩の方は見ないで、ずっとそっぽを向いたまま。
理由を恐らく察しているだろう龍宮寺先輩はずっと笑っていて、訳の分からない残り3人はポカンとしていた。
「和泉?もしかしてオレ、何かしたか?」
何かしたか…だって?
覚えてないのかこの人は…俺の鎖骨辺りにキスマを残した事を。
結局はからかいなのか、それとも反応を見て遊んでいたのか…どっちにしろ質が悪い。
そう思いながら、三ツ谷先輩の方を振り向きながら睨むように見ると三ツ谷先輩はびっくりしたような顔。
そして俺は思いっきり『ダンッ!!』と音がなるほど、三ツ谷先輩の足を踏みつけた。
「いっっ!!??」
「ぶはっ!!!」
「俺、診察受けなきゃいけないのでそろそろ失礼します」
椅子から立ち上がってから、カーテンを開けてから立ち去る前にと振り返る。
もちろん三ツ谷先輩の方は見ずに龍宮寺先輩の方。
「次エマ泣かせたら…容赦しないですからね」
「肝に銘じとく…」
「そうしてください」
病室を出て、エレベーターで1階に降りる為に廊下を歩き出した時突然腕を引っ張られた。
足音も気配もなく突然だった為、かなり驚いてから顔だけを振り向かせると…。
「さ、佐野先輩っ…??」
「ちょっとこっち来て」
「え、ちょ…佐野先輩!?」