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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第1章 泣き虫ヒーロー誕生


「元気してた?」

「昨日の今日っスよ」

「今日ヒマだろ?」

「いやっ…そうでもないっス」


龍宮寺堅に肩に腕を置かれた武道は萎縮したようになり、完全にカツアゲされそうな人間に見えてしまう。
それに勝手にヒマと決めつけられているし。


「イズミっちもヒマでしょ?」

「別にヒマではないですね」

「えーでも来たってことはヒマなんでしょ?」

「武道にお願いされて来ただけなんで」

「ほんと素っ気ねぇの」


素っ気ないのは当たり前だろ。
スンとした表情のまま俺は佐野万次郎の事を見ていれば、無邪気そうな笑顔を見せる。

似てるけど似てない。
というかコイツとあの人を似てると思うのがなんか癪だな…と思ってしまう。


「ちょっと付き合えよ」

「え…?ボクの話聞いてます?」


ふとザワつく声が聞こえたので視線を後ろに向けてみれば、騒ぎを聞きつけた生徒達がいた。
近寄り難いのか離れた場所から野次馬のように見ている。


「え?花垣と神澤って、あのマイキーと仲がいいの?」

「バカ、声でけぇって!」

「ウチにそんなすげぇやついたの!?」


いや全然仲良いわけじゃない。
なんなら昨日会ったばっかりだし、こちとらダチなんて思ってないのに勝手にダチ認定されているだけ。

だがこれはチャンスなのだろう。
佐野万次郎に近付けれるのならば、武道の言っていた稀咲鉄太との接触を止められるのだから。
そう考えていた時である。


「ちょっと待って!」

「橘……」

「あン?誰だオマエ?」


昇降口にいた俺達を呼び止めたのは橘。
眉を釣りあげており、どうしたのだろうと武道と共に彼女へと視線をやった。


「ごめんヒナ…。今日立て込んでてさ」

「…橘?」


声をかける武道を素通りする橘。
どうしたのだろうと思っていると、彼女は佐野万次郎に対して思いっきり平手打ちをしたのである。
バチンと乾いた音がやけに大きく響いた。

まさかの事に武道はとんでもない不細工な顔をして、俺は思いっきり目を開かせた。
そして辺りの野次馬のザワつくが一際大きくなる。


「タケミチ君、和泉君。行こう!」

「え?」

「え、橘??」

「こんな人達の言いなりになっちゃダメだよ」


平手打ちした橘は俺と武道の腕を取ると歩きだす。
だが直ぐに俺は橘の行動の理由が分かった。
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