The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
たるんだ顔をしやがって。
そう思いながら1歩下がって2人を見てみれば、懐かしい気分になった。
(そういえば…なんか似てるんだよな。“あの2人に”)
大切な人達と似てる大切な人達。
次はあの人達みたいに失いたくない…だから守らなきゃ。
そう思いながら下唇を噛み締めた。
「和泉君?どうしたの??」
「和泉?」
「…なんでもねぇよ」
そう呟きながら俺は武道と橘と共に学校へと向かった。
暫く橘と一緒に登校出来て浮かれていた武道であったが、授業が始まりだすと机に突っ伏して唸り出す。
多分浮かれている場合じゃない事をやっと分かったのだろう。
佐野万次郎と稀咲鉄太の出会いを止めなきゃいけない…そのミッションが終わってないのだから。
(ていうか稀咲…稀咲って苗字何処で聞いたんだっけ?)
何処で聞いたのだろう。
そう悩みながら、目の前の席に座って唸っている武道の背中を見た時である。
「おい!勝手に校内に入っちゃダメだよ!!」
「どこの中学だ!!」
「ん?」
「あ?」
廊下から怒号が聞こえてくる。
その瞬間何か嫌な予感がして、眉間に皺を寄せていればガラッと教室の扉が開いて嫌な予感が的中した。
「お♡いたいた」
「……まじかよ」
「え?」
「遊ぼうよ、タケミっちにイズミっち♡」
「…嘘だろ」
まさかの教室の扉を開けて入ってきたのは、昨日ぶりの佐野万次郎と龍宮寺堅であった。
ずかずかと他所の中学の教室に入ってくる姿を見て、めちゃくちゃだなと呆れてしまう。
ていうか遊ぼうってアンタら学校は?
と色々ツッコミを入れそうになるが、取り敢えず深い深い溜息を零した。
「ほら、行くぞ!」
「え、あ、え!?」
「俺はパスで。武道、行ってこい」
「はぁ!?」
面倒事には巻き込まれたくない。
そう思って行かないと言えば、武道は目を大きく見開かせてから俺の机を叩く。
「オレ一人は嫌だっ……!」
「面倒事に巻き込まれたくない」
「お願い、和泉っ!ていうか協力してくれるって言ったじゃんっっ!」
「ハーゲンダッツ」
「幾らでも!!」
言質取ったからな。
そう言いながら俺はまた溜息をついてから、椅子から立ち上がると携帯でタクヤにメールした。
武道と俺の鞄を武道の家に届けるようお願いする為にだ。