The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
すると修二は興味が失せたような顔をして、傍から離れていくので小さく溜息をつく。
そしてウィッグを投げられたのでそれをキャッチしてから、手早く付けた。
「面白くねぇわ」
「はいはい、ごめんな。面白くなくて」
「ホテル行くかぁ?」
「話の脈絡みがないな、行かねぇよバァカ。俺もうネッカフェ行くから」
それだけを言うと修二を追い越してから、歌舞伎の街へと足を踏み込む。
すると腕を掴まれてしまい、怪訝そうな表情をしながら振り向けば無表情の修二。
不機嫌そうだなぁ。
そう呑気に考えながら、小さく首を傾げてみると溜息を何故かつかれた。
「普通は送れとか言わねぇの?」
「今まで俺、それ言ったことあったけ?」
「ねぇな」
「だろ。つーか送ってもらわなきゃいけないほど弱くはないんだけど?」
「知ってる。オレとタイマンして勝ったしなぁ、お前」
修二の言う通り俺は修二のタイマンして勝った。
なんでタイマンしたかと言うと、理由は忘れたが多分修二言動にイラついて喧嘩になったはず。
「じゃあな、修二」
「たまには可愛げがある事言えよー」
「余計なお世話だっ!」
自由奔放の愉快犯である幼馴染と別れて、俺はゆったりとした足取りで歌舞伎の街を歩く。
その街は夜のハズだけどネオンで輝いていて、眩しくてふと昔の事を思い出した。
大切な人達のネオンが光るこの場所を歩いた事を。
そんな事を思い出せば、じんわりと目頭が熱くなってきて思わず目を瞑った。
「危なっ…こんな所で1人で泣きたくないわ」
そう呟いた俺は目を擦って涙が出てないことを確認して、また歩き出した。
この街には色んな思い出があるが、どれを思い出しても泣きそうになってしまう。
(4人でいた時とか…それにこの眩しさはあの人の笑顔を思い出すなぁ。ネオンの光より眩しかった)
そしてまた佐野万次郎の顔を思い出した。
12年後には犯罪組織の2トップの1人と聞いたが、あの気味の悪い笑み以外を見ればなりそうに見えない。
「……でもアイツ暴君過ぎない??修二より性格やばそうだなぁ…嫌だなぁ。なんかダチ認定されてるし」
大きく溜息をつきながら、ネッカフェへと足を進めていく。
明日武道と今後どうしていくか話さないとな…なんて考えながら歩いていた。
誰かに見られている事なんて
まったく気付かずに……。