The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
未だにあの表情をする和泉に、思わずドラケンはそう聞いたが彼女は何も答えずに薄く笑ってから家の中へと入って行ってしまった。
「なんだアイツ…。さっきまで機嫌悪そうだったクセに、もう機嫌戻ってやがる……」
やはり数日しか過ごしてないから、彼女がどんな人間なのか分からないな。
そう思いながらも、機嫌の悪さや良さがどことなくマイキーに似ておりドラケンは頭をかいた。
当の和泉は、リビングに移動してから台所を覗く。
漂ってくる味噌汁の優しい匂い、卵焼きの甘く香ばしい匂いはなんとも食欲をそそる。
「お腹空いた?」
「え、あ……うん」
「おいで、和泉」
調理をしていたエマは、和泉が来たのに気付いて声をかけてから手招きする。
その姿に和泉は何となく、懐かしさを覚えてしまった。
(あ……そうか。叔母さんに似てるんだ)
腹を減らして台所をウロウロする幼い和泉に、手招きをしてこっそりつまみ食いをさせてくれた叔母。
そんな叔母の姿がエマに重なって見えていた。
「はい、卵焼き〜。マイキーには秘密だよ?すぐに拗ねてうるさいんだから」
「…うん」
クスッと笑いながら、和泉はさえばしで口元に持ってこられた卵焼きにかぶりついた。
ほんのり甘く出汁の味がする卵焼きは、三ツ谷の卵焼きとは違っているが美味しい。
「美味しい…」
「なら良かった!ちょっと心配だったんだよねぇ」
「何が?」
「和泉、三ツ谷のご飯好きみたいだから。ウチのご飯気に入ってもらえなかったどうしようって」
「……なんで、分かった?三ツ谷先輩のご飯好きって」
「幼馴染の感かな?」
やはりエマには敵わない。
そう思いながら和泉は頬をかいてから、三ツ谷の顔を思い出した。
昨日自覚してしまった、彼へと想い。
気付いたって仕方ないから、気付きたくはなかった…だがもう後戻りは出来ないのだから気持ちに蓋をするしかない。
(エマは…そんな事するなって言うだろうけど……)
環境的に、家柄的に。
そして何しろ三ツ谷に迷惑をかけてしまうのだから、この想いに蓋をしてから気付かないフリをしなければ。
「気付きたくなかったな…」
「ん?何か言った〜?」
「いや……なんでもないよ。エマ…」