The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「ねぇ、和泉。好きになるのに日数や時間は関係ない…好きになるのは自由なんだから。一目惚れっていう言葉だってあるんだから」
「エマ…」
「ウチも、ドラケンと初めて会った時からドラケンを多分好きになってたかも。気付いたのは遅かったかもしれないけど」
えへへと笑いながら、エマは俺の頬に触れてくる。
白くて細くて人を殴る事なんて知らない、純粋無垢なその手は汚い俺を優しく撫でた。
「もう1回聞くね。和泉は、三ツ谷の事どう思ってる?」
どう思っているか。
優しくて、人の心に入り込むクセに気遣ってきてでも不快じゃない。
そして笑顔が綺麗で、全部が眩しくて…そういう所全てが好き…。
「っ…!?」
今自分は、三ツ谷先輩を好きと思った事に目を見開かせながら息を飲んだ。
ああ…自分は三ツ谷先輩の事が好きなんだなと自覚しながら、唇を噛み締める。
気付きたくなかった。
だってこんな好きと気付いても、この恋が実る事はないのだから。
(家の為に政略結婚しなきゃいけない…。三ツ谷先輩は俺をただの後輩しか思ってないし、傍に立つことは出来ない)
なんで俺は三ツ谷先輩を好きになったりしたんだろう。
なんで俺は叶うことの無い恋をしたんだろう…唇を噛み締めすぎたのかジワッと口の中な鉄錆の味が広がる。
「和泉……」
「あ……」
「三ツ谷の事、好きなんでしょ」
「っ…」
エマは何でもお見通しらしい。
誤魔化してもきっと無駄なんだろう…なんて思っていれば、エマは優しく俺の頭を撫でた。
「和泉…怖いの?人を好きになる事が」
「怖い……のかな、分からない」
今まで人をこうして好きになる事はなかった。
いや…あったかもしれないけど、あれは好きになっても意味の無い『好き』だったから。
『イズ。おいで、イズ』
俺の名前を呼ぶ声が蘇ってくる。
それを消すように、ぐっ…と眉を寄せて目を閉じてからエマを見た。
「好きになっても、仕方ないのにね…」
「え?」
「なんでもない。寝よう」
「告白は?」
「しない。エマはしないの?龍宮寺先輩に告白」
わざと話を逸らして、エマの話に変えれば彼女は顔を真っ赤にさせた。
好きな人に告白なんてそう簡単じゃないだろうけど…つい話を逸らす為に。