The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「ねぇ、和泉。このまま泊まって行きなよ」
「……え?」
「もう暗いし」
エマはタオルで手を拭いながら、振り返りそう微笑む。
泊まっていけというのは、エマの優しさもあるのだろう…だが晩御飯までご馳走になったのにという遠慮が現れる。
それにこの家に泊まるのは少し気が引ける。
鳴ねぇの思い出が詰まったこの家に…俺のせいで死んだ鳴ねぇの思い出がある場所にいて良いのだろうか。
「……いや、遠慮しとく。今日は帰る」
「え!?もう遅いんだよ!」
「この時間帯なら平気」
「でも…危ないよ。この時間帯チンピラもうろちょろしてるし…」
「エマ、俺がチンピラ相手に負けると思ってる?俺、そんなにヤワじゃないよ」
「それはウチも知ってるよ」
ムスッと顔を歪めるエマに笑みがこぼれる。
純粋に心配してくれているのだろう…相変わらず優しいなと思いながら立ち上がるとエマの眉間を指で突く。
「俺なんか心配しなくても大丈夫。じゃあ、俺そろそろ帰るわ」
「…マイキー達呼んでくる」
「ん、ありがとうな」
エマを見送りながら、玄関へと向かっていく。
家にはなんとなく帰りたくないので、また放浪しながらホテルにでも泊まろうかな。
そう思っていれば複数の足音が聞こえてきた。
「イズミっち、帰んの?折角だから泊まっていけばいいのに」
「晩御飯までご馳走になってますし…」
「えー!でも三ツ谷の家には泊まったんでしょ?泊まっていけばいいのに」
ムスッとする佐野先輩が、エマに似ていて笑いそうになってしまう。
やっぱり異母兄妹としても似ているもんだと関心していれば、エマもまたムスッとする。
そして隣にいる龍宮寺先輩は苦笑い中。
だけど助け舟はくれないんだろうな…と思っていれば、また足音が聞こえてきた。
「和泉くん。帰るのか?」
「はい。遅くまでお邪魔しました」
「…もう遅いから泊まっていきなさい」
「え…いや、でも…」
「泊まっていきなさい」
否定させないような言葉の強さに口ごもる。
これは大人しく泊まった方が良いな…と息を吐いてから、履きかけていた靴を脱ぐ。
「…お世話になります?」
「やったー!!じゃあ、パジャマとか用意しなきゃ!!お風呂沸かしてくるから一緒に入ろ!!」
「エマ、すげぇはしゃいでるし…」