The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
あの人の笑顔はこの街を彩るネオンより明るかった。
明るかったし綺麗で……でももう二度とその笑顔は見れないのだ。
どんなに願ってもどんなに求めてもだ。
「どうしたぁ?」
「……何でもない」
「何でもないって顔じゃぁねぇけどなぁ」
修二と共に歌舞伎町の街を歩き出す。
こうして2人で特に何処に行くとか無いが、色んな所に行ったりしていた。
俺が家に居たくないからだ。
居たくないから、修二はこうして付き合ってくれて夜の街を歩いてくれる。
(文句は色々あるけど、昔から減らず口は少なくならないけど付き合ってくれるんだよな……)
修二の存在は何だかんだ俺の助けである。
武道と一緒でやり方は違うけど、俺を守ってくれている大切な幼馴染。
「あ、おい。アレ歌舞伎町の死神だぞ」
「マジだ、やべぇ。近づかねぇようにしねぇと」
「前アイツに絡んでタコ殴りされてた奴いたよな。顔面ボコボコで原型留めてなかったらしいぜ」
「やだ、こわぁい。でもイケメンだし、隣の子もイケメンねぇ」
「ホントだ。でもなんか不機嫌そうだね」
そうだよ不機嫌だよ。
幼馴染が嫌な感じで言われていたら誰でも嫌だろ…まぁコイツの場合は自業自得な所はあるが。
「ばはっ。視線がうぜぇ」
「だったらもっと行動に慎みを持てよ」
溜息を零しながらチラッと修二の方を見る。
ノッポとも呼ばれる背の高さに、スラッとした体型であり顔の造りは良い。
でも性格の問題は多々ありなのが駄目だ。
昔は『歌舞伎町の死神』なんて通り名は無かった。
だけど喧嘩の強さとかでそう囁かれるようになり、悪い噂も耳にする。
(昔はもうちょい、もうちょい…性格は良かったはずっ)
断言できないのは察してほしい。
そう思いながら修二の顔を見ていれば、パチッと金色の瞳と目が合う。
そして腕を掴まれたかと思うと路地裏に引っ張り込まれた。
「おいっ」
「なぁに?んなオレの顔を見つめてさ…すげぇ熱い視線じゃねぇか」
「あ?んな視線送ってねぇよ。自意識過剰だろ」
「ん〜?そうかぁ?」
路地裏の壁に押し付けられて、両腕を掴まれた状態で修二に見下ろされる。
その金色の瞳は愉快げに細められており、まるでチェシャ猫だなと考えていれば腕を押さえつけていた修二の片手が離れて俺の頭に伸びたと思えば視界に長い黒髪が揺れる。