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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第1章 泣き虫ヒーロー誕生


頼んだハンバーグにナイフを入れれば、ゆっくりと肉汁が溢れてくる。
そして1口サイズにして口に入れて咀嚼していれば、修二はピザを口にしていた。


「お前、最近なにしてた?」

「んー?別にぃ何も」

「何も無かったらなんで2週間以上連絡無かったんだよ」

「心配した?」

「なわけ」

「心配したんだな。可愛いなぁ和泉は」


じんわりと口に肉汁が広がるように、体に苛立ちが広がってはいくが無視してハンバーグを食べ続ける。
すると修二はニタニタと笑い続けていた。

昔はこんなじゃなかった…いや昔もこうだったか。
そんな事を思いながら、食事を終えてアイスティーを口にしていた。


「なぁ、やっぱ」

「却下」

「まだ何も言ってねぇんだけど?」

「どうせチームに入れだろ?却下だ却下」

「ダリィ……」


修二は口癖を言いながらまた煙草に火をつける。
ニコチン野郎と心でボヤきながら、氷が溶けた水で薄まったアイスティーを飲み干した。


「お前、今日は家に帰んの?」

「帰らない。適当にネッカフェで寝る」

「ホテル行くか?」

「誰が行くか、ど阿呆。適当に女に電話して1人で行け」

「辛辣過ぎだろ。昔は『修二お兄ちゃん』って、後ろをちょこちょこ跡つけて歩いていたクセに」

「さっさと支払いして出るぞ」

「オレが払うんだけどなぁ〜」


レジに向かった修二を置いて扉を開ければベルのような音が鳴った。
それを聞きながら外に出ると生ぬるい風が頬を撫でていき、髪の毛を揺らした。

揺れる髪の毛が煩わしくて、払いながらふと佐野万次郎の事を思い出す。
頬に返り血を付けて笑みを浮かべる姿は、理由は分からないが背筋が凍った。


(あまり、あんな事無いんだけど……佐野万次郎のあの笑みは背筋が凍る……よく分からない怖さがあったな)


何の恐怖か。
そう聞かれても答えられない恐怖……今まで味わった事のない恐怖だ。


「どうしたぁ?んな難しそうな顔して」

「…修二はさ、佐野万次郎って知ってるか?」

「……無敵のマイキーだろ?こういう界隈にいる奴で知らねぇのはそう居ねぇよ」

「そっか。佐野万次郎ってさ、俺と歳近い?」

「あ?1つ上じゃねぇ?確か中3って聞いたぞ」

「…ふーん」


脳裏にとある人物が浮かんだ。
昔からお世話になった人の、明るく輝く笑顔を。
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