The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「そーいう所は、女の子っぽいよな」
「え?」
「大丈夫だ。母ちゃん、今日も帰ってこねぇから」
だから行くぞ。
そう三ツ谷は言うと和泉の手を握ったまま歩き出した。
暑い季節の中、頬や額には汗の粒が浮かんでいはいたが手の温もりは2人にとって不快ではない。
それがお互い不思議に思いながら歩いていった。
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ー和泉sideー
三ツ谷先輩の家に着替えをとってから、俺は彼により家付近まで送ってもらっていた。
流石に家まで送ってもらうのはアレなので近くまでだ。
「三ツ谷先輩、ここで大丈夫です」
「ここでいいのか?」
「はい。送ってもらってありがとうございました……それと昨夜からお世話になりました」
情緒不安定になりかけていた時に、傍にいてもらったのは本当に助かった。
ああいう時は1人でいる事が楽で傍に誰かいるのは、嫌いだった筈なのに三ツ谷先輩といた気分が落ち着いていた。
不思議なものだ。
まだ出会ってそんなに経ってもいない人が、俺にとって安心できる人になっているのだから。
「また、なんかアレば頼って良いからな。あんま1人で背負い込むのはよくねぇよ」
「…はい。ありがとうございました」
「おう。じゃあ、おやすみ和泉」
「おやすみなさい」
三ツ谷先輩は手を振ると歩いていき、その後ろ姿を見送ってからウィッグを付けた。
あんなに楽しかった気分はどんどんテンションを下げていき、顔から表情が抜けるのが自分でも分かる。
「今日は、鉢合わせしなきゃいいけど……」
なんて呟きながら、ゆっくりと家へと足を進めていく。
無断外泊ではあったがウチはそんなに気にするような所ではない。
放任主義というのだろうけど、まぁ家業を継ぐ勉強と男装さえしていれば自由。
喧嘩をしようとも、無断外泊しようとも、何日家に帰らなくても怪我しても病気しても。
放任主義な家ではあり、自由ではあるが自由ではない家。
「……なんで、こんな家に生まれたんだろうな。俺は」
自分自身を嘲笑いながら、門を潜り馬鹿みたいに玄関まで長い道を歩いていく。
時間はそんなに遅くないからか、声が聞こえるから気をつけなければ。
「……あ、あとで武道にメールしとくか」
心配しているだろうからなぁ。
喧嘩、悪化してる事を。