The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
「大体お前は急に連絡来ないと思ったら一方的に電話かけてくるし、突然会いに来るしふざけんなよ。罪と罰とか変な刺青入れやがって、ドストエフスキーにでもなりたいのかよ」
そう言いながら何度も脛を蹴っていれば、修二に足を掴まれてしまい顔を顰めた。
すると修二はゆっくりとそのまま足を撫でてきて、ゾワッと粟立つような感覚を覚える。
「足癖悪ぃなぁ。綺麗な足してんだから、もっと自分の足大事にしろよー?」
「お前の息子蹴りあげようか」
「物騒だな。ていうか頼めよ何か」
「……ハンマーめ」
「ハンマー言うな」
メニュー表をパラパラと捲りながら、何を頼もうかと目を通していく。
ハンバーグにステーキ、修二が奢ってくれると言うならば高いやつでも頼んでやろう。
そんな事を思いながら何を頼むか決めて、呼び出しボタンを押せば直ぐに店員が来る。
来たのは良いが顔が強ばっているのは修二のせいだろう。
「おろし醤油ハンバーグのバケットセットとマルゲリータと、オニオングラタンで」
「か、かしこまりました」
「……頼みすぎじゃねぇ?」
「修二が金出すし、折角なら頼んだ事ないやつ頼んだ」
「お前の方が金あるクセに」
そう言いながら笑みを浮かべて、咥えていた煙草を口から離すと煙をゆっくりと吹かせた。
煙はゆったりと揺れながら少し苦い匂いを辺りに漂っていく。
「ていうか、何で呼び出した?」
「ん〜、オマエにとあるチームに入ってほしくてよ」
「断る」
「ばはっ!即答じゃねぇか。お前に是非入って欲しいって言う奴がいるんだよ」
「他を当たれって伝えとけ。俺はチームには入らねぇし興味ねぇし、どうせ金と地位だろ?」
「まぁ、否定は出来ねぇわな」
金に地位に権力。
この三拍子全てを神澤家は持っているせいで、暴走族やら半グレやらは俺をチームに勧誘してくる。
片っ端から断っているが執拗い。
そして修二を使って勧誘する奴らもいた。
というかコイツは俺がチームに入りたくないと知っているのに、こうして聞いてくる所は質が悪いし性格も悪い。
「お待たせしました。おろし醤油ハンバーグのバケットセットにマルゲリータ、オニオングラタンです」
「ありがとうございます」
「それでは、ご、ごゆっくり」
「ビクビクしすぎじゃねぇ?」
「お前のせいだと思うけどな」