The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「不思議って言われても……」
顔立ちが男装に向いているのだろう。
男にも女にもなれる…だけどそこに『俺』はいない。
何にもなれるけど、本当の自分にはなれないただの人形…。
「和泉?」
「あっ……ごめん。どうかした?」
「カラオケ店入ろ。三ツ谷とドラケン入って、部屋空いてるから確認してる」
「うん……」
余計な事を考えたな…そう思いながらカラオケ店へと入っていけば三ツ谷先輩と龍宮寺先輩がカウンターにいた。
部屋番号の板とグラス4つを手にしてから、俺とエマの方へと振り返る。
「ん、グラス」
「ありがとう、ドラケン」
「和泉も」
「ありがとうございます」
「大丈夫か?なんか、考え事してたみたいだけど」
心配そうに眉を下げながらそう聞いてくる三ツ谷先輩は、俺の顔を覗き込んでいた。
シルバーパープルの瞳に映るのは情けない顔をしている自分。
なんて情けない顔してるんだろう。
そう思いながら、三ツ谷先輩に目が笑ってもいない笑顔を向けた。
「何でもないですよ。グラス、ありがとうございます」
「……ああ」
グラスを手にして、ドリンクバーでジンジャエールを注いでから4人で部屋へと向かう。
廊下を歩いていけば音漏れが聞こえてくるのと、時折薄く香ってくるタバコの匂いがした。
「お、ここだ」
「和泉って、カラオケ普段くる?」
「ん?ああ…武道とか溝中のメンバーで行くけど」
学校サボって朝から夜まで歌ったりする事はある。
ああいうバカな事をするのは、楽しいし嫌な事は全部その時だけは忘れることができた。
「ウチと行くの初めてだよね」
「…言われてみればそうだったな」
「和泉の歌声楽しみ!!」
「別に期待されるような歌声じゃないけどな」
そう話しながら部屋に入っていけば、広めの室内に長めのソファが2つ置かれ中心にはテーブルが置かれていた。
電気を付けてからクーラーも付けていれば、エマが俺の腕を組みながら歩き出す。
「ウチと和泉は隣同士に座る」
「エマちゃん…和泉を独り占めか?」
「良いじゃん。三ツ谷、朝から和泉をデートで独り占めしたんでしょ?」
「いや…デートじゃないんだけど」
「つーか、エマとイズミっちって姉妹みたいだよなぁ」