The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
武道は何があっても守るべき存在なのだ。
俺がそう考えて行動するようになったのは、勿論あの武道が親族に怒鳴って俺を守ってくれた時からだろう。
重すぎる。
そう言う人間もいるかもしれない…だけど武道は何があっても守るべき存在だ。
「コイツの為なら命でもかけられる」
「お前…ホント、タケミチ大事だよな」
「まぁな」
失神したままの武道の前髪に触れながら、傷跡を見て帰ったら手当しないといけないな。
そう思いながらもふと、コイツを守らないといけないと更に思いだしたのは昨日からだ。
(タイムリープしてまで、助けようとしてくれている。なら俺もそれに協力するし、最悪の場合は橘だけ生きててくれたら良い。だから2人を何としてでも守らなければ)
自分が死ぬ死なないはどうでも良いと思う。
でも橘は死んで欲しくない…それと未来では別れていたと聞いたが……それでも橘には武道の傍にいてほしい。
「んっ……あ、れ」
「お、起きた」
「タケミチ!大丈夫か!?」
目を開けた武道は空虚を見つめるかのような瞳であったが、千堂が顔を覗き込んだのでハッキリとした瞳へと変わる。
そして飛び起きると俺を視界に捉えてから、突然肩を掴んできた。
「オマエっ!!!おまっ、お前!!」
「オマエの続きを言えよ」
「危ない事するなよっ!!助けてくれたのは嬉しいけど!!!」
「幼馴染助けて何が悪い」
「開き直ったように言うなぁ!!」
俺が佐野万次郎に向かって睨んだりしたから怖かったのだろう。
だって暴走族の総長に対してあんな態度を取っていれば、殴られたりするとか考えたのだろうな。
生暖かい目で目ていれば、武道はずっと猿のように『キーキー』と文句を言っている。
暫く文句を言い続けると落ち着いたようで黙っていた。
(猿みたいに怒るのは26歳になっても変わんないんだな)
そう思っていれば携帯がバイブ音を響かせた。
武道から視線を外して携帯を見てみれば、着信でありある人物からの電話。
「……もしもし」
『和泉〜、今から歌舞伎町の何時もの所なぁ』
「は?」
『じゃあ待ってるぞ』
「あ、おい!」
一方的な電話は一方的に切られた。
ピキっと額に青筋が浮かぶのが分かったが、取り敢えず自分の気持ちを落ち着かせてから数度息を吸って吐いてを繰り返す。