The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
「さて、帰ろっか。ケンチン」
返り血を頬や髪の毛に付着させながら微笑みを浮かべるマイキー。
その表情を見た武道は口を開けっ放しであり、背を向けて歩き出す彼らへと視線は向けたままであった。
「“喧嘩賭博”とか下らねー」
「“東卍”の名前落とすようなマネすんなよ」
充分落ちてると思うけど…。
内心和泉はそう思ってはいたが、口には出さず哀れみを込めたような瞳で2人を見ていく。
すると何かを思い出したのかマイキーは此方を振り返ると、その真っ黒な黒曜石の瞳で武道と和泉を捉える。
そして笑みを深めた。
「タケミっち、イズミっち。またネ♡」
その瞬間2人して背筋を凍らす。
何故かは理由は知らない…ただマイキーの笑みに武道と和泉は体が一瞬冷えた感覚を味わったのだ。
「テメぇらボーっとしてないで解散しろー」
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ー和泉sideー
呆気なく帰って行った東京卍會の総長・佐野万次郎と副総長の龍宮寺堅を思い浮かべる。
あの後喧嘩賭博で集まっていたギャラリーは撤退したが、武道が殴られた影響なのか失神した。
なので今はベンチで横にさせている最中。
「神澤」
「……千堂」
武道が横になっているベンチの横にあるベンチに座っていれば、何処か暗い表情を浮かべている千堂が目の前に現れた。
普段バカやっている奴だが、意外と真面目な所がある千堂だが今日は暗い。
夕日が沈みかせているからなのか、この場所にライトが無いから暗く見えるのだろうか。
そう思っていれば千堂が隣に腰をかける。
「お前さ、無茶し過ぎだろ」
「はぁ?」
「聞いたぜ、タケミチに。昔…小学校の低学年の時に高校生に絡ませてタケミチ守る為逃がしたけどレンガの角で頭ぶつけて数針縫ったって話」
「ああ……」
「オマエ、タケミチの事になると無茶するよな。今日だってマイキーに対して睨むし」
千堂が話している昔の話。
それは不良が突然公園で遊んでいた俺たちに絡んできて、武道を逃がした後に突き飛ばされてレンガの角で頭をぶつけて後は千堂の話す通り。
そのお陰が分からないが俺は不良やら暴走族やらが苦手だし嫌いになった。
いや…それだけが理由とは言えないけれど。
「別に無茶はしてないけどな。ただ守るべき存在だから、守ってる」