The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
店に入れば奥の部屋へと通された。
内装は中華料理店だと思う普通の内装だが、何処か上品な雰囲気。
そして確か二胡(アルフ)と呼ばれる楽器の音色が店を包んでいる。
「内装はまぁまぁだな。雑誌とかに特集されていたから、結構期待したけど…」
「テレビとか雑誌で特集される店は、大体こんなもんだろな。期待はしない方が良い」
「そういうもんなんだな…。ココと和泉は物知りだな」
「物知りというか…」
「こういう店に連れてこられる事が多いからな…」
金を作る天才と、将来の地位と権力を約束された者。
汚い考えを持つ者達に連れてこられる事は多々あるので、知っているだけ。
だが青宗は『物知りだ』と何故か尊敬するような瞳で見てくるので、俺と九井は何とも言えない苦虫を潰したような表情をした。
「メニュー見ようぜ。味はどうか知らねぇけど」
「和泉、何頼む?」
「青宗、折角だから1番高いやつ頼もう。九井の奢りだしな」
「和泉がそう言うなら、頼もう」
「おいコラ、そこの2人。はぁ…まぁ良いけどよ」
九井の話なんて聞かずに、青宗と一緒に何を頼もうかとメニューを2人で見ていた。
すると九井の笑い声が聞こえ始めて、微かに眉間に皺を寄せる。
「お前ら、ホント仲良いよな」
「あ?」
「まぁ仲良いのは当たり前だな。オレと和泉、小さい時からの仲だから」
「まぁ、そうだな」
幼馴染と呼べる間ではない。
だが昔からの知り合いであり、お互いの心情や心境は多少分かる仲であった。
それに俺は別に青宗が嫌いだから、黒龍への勧誘を断っているわけじゃない。
もし黒龍が汚い事へ手を染めなければきっと黒龍への勧誘に頷いていただろう。
「オレはフカヒレの天津麺にするかな」
「じゃあ、オレは天津飯」
「畏まりました」
「じゃあ、オレはこれとこれとこれと…あとこれと」
すると九井はメニューを片っ端から頼むのか。
そう言われてもおかしくないぐらい、メニュー表に乗っている物を頼みだした。
その状況に店員は目を白黒させながらも、言われたメニュー伝票に書いている。
大変だろうなぁなんて人ごとに思いながら、出されたお冷のグラスを手にしてから口をつけた。
「お前、相変わらずの大食いだよな…。胃袋どうなってんだよ」
「ココの胃袋はバケモンだ」