The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
眉をピクリと動かし、怒気を孕んだ声である和泉に武道はまた更に顔を青ざめさせた。
話を聞かないと通じないで苛立っているのだろう…直ぐにそれに気が付いた武道はワナワナと口を震わせる。
「和泉っ、お、落ち着けっ」
「ダチ決定、ね♡」
「ダチって言ったら、ダチなんだろ?イズミっち」
「……は???聞いてた??俺の話??」
ここまで話を聞かない人間いるのか。
和泉は口元をひきつかせながら、目の前にいるマイキーとドラケンを睨みに近い目で見る。
だが2人ともそれを気にしてなんていない。
それどころかマイキーは和泉の言葉に返答せずに、彼女から背を向けるとある場所へと目線をやる。
目線の先には中腰になったキヨマサ。
「オマエが“喧嘩賭博(コレ)”の主催?」
「は…はい!」
ニコッと微笑みを浮かべるマイキー。
その姿を見て、『褒めるのか?』と和泉は怪訝そうな表情をした時である。
マイキーの右足が上がりキヨマサの顔を蹴りあげていたのは。
「あが」
「誰だオマエ?オイ」
顔を蹴られたキヨマサは白目を向き、武道はそれを見て目を見開かせていたが和泉は無表情のまま。
そしてマイキーはキヨマサの髪の毛を掴むと、そのまま拳を彼の顔に何度も打ち込む。
殴られる際に響く鈍い音。
その音に周りは青ざめている中、和泉はゆっくりとマイキーに近付き殴るその腕を止めた。
「辞めてもらえませんか」
「何?イズミっち、自分の親友殴ってた奴庇うの?」
「庇う庇わないじゃないんだよ。見せられてるこっちが胸糞悪いから……他所でやってもらいないですかね?」
凍てつくように冷たい目線の和泉に、何処までも無表情なマイキー。
その2人に武道は思わず息を飲みながらも『辞めてくれ和泉!!』とここで叫ぶが勿論聞こえるわけが無い。
「いーよ。辞めてあげる、ダチのお願いだしね」
「だから俺はアンタのダチじゃない」
「ダチだって。オレがそー言うんだから、そうなの」
「暴君かよ……」
するとマイキーは先程の無表情とは打って変わって、笑顔を見せていた。
だがその発言は暴君そのままであり和泉はすぐ様『嫌いな人種だ』と心で呟きながら倒れたキヨマサを踏みつけるマイキーを見る。