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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第3章 8・3抗争


「逃げるか」


コイツと飯食うぐらいなら逃げた方が良い。
そう思って、家の前に着く前に踵を返して歩こうとした時であった。
黒塗りの如何にもな車が俺の横に止まったのである。


「そこのお姉さん、食事でも如何かな?」

「……チッ」

「逃げると思ったから、時間より早くに迎えに来たのがやっぱり正解だったな!なぁ和泉」

「このクソ銭ゲバ野郎が」

「おいおい、口が悪ぃな」


助っ席の窓が開いたかと思えば、やはりそこには銭ゲバ野郎もとい九井一が座っていた。
俺が逃げることを予想して早めに迎えにきたらしい。

行動を把握されて予想までされた所が癪に障る。
そう思いながら、まだ逃げれるかなと車から目線を外した。


「逃げるなよ、和泉。イヌピーも待ってんだからよ…ほら、乗れよ」

「2人揃ってお迎えよ」

「和泉、乗ってくれ」


すると後部座席の窓も開いて、青宗が顔を覗かせてからそう頼んでくる。
だがその頼みはまるで逃がさないぞという意味が込められているような気がした。


「チッ…。分かった」


そう返答をすれば、何故か青宗は嬉しそうに表情を変えているものだから何とも言えなくなるものだ。
だがニヤニヤしている九井はやはり癪に障る。

ほんとコイツ嫌い。
そう思いながら、後部座席の扉を開けてからリアシートに腰をかける。


(最悪だ…三ツ谷先輩のご飯食べれないなんて……。メールしとかなきゃな)


深い深い溜息を零して、三ツ谷先輩に家に行けなくなった事をメールして送った。
そしてミラー越しで此方を見て笑う九井が見えて、そのリアシートを蹴る。


「おいおい、蹴るなよ。足癖ホントに悪いなぁ」

「そのニヤケヅラを見せんな、銭ゲバ野郎」

「口も悪ぃし…。もう少しお淑やかでいろよなぁ」

「余計なお世話だ、ツリ目狐が」


ほんとコイツ嫌い。
なんて考えていれば、隣からやたら嬉しげな表情が見えるものだから眉間に皺が更に寄った。


「何でお前は嬉しそうなわけ?」

「久しぶりに和泉と飯が食えるからな」

「そんなに一緒に食べて無かったっけ?」

「前一緒に飯を食ったのは、1ヶ月前が最後だ!」

「…よく覚えてんな」


少しげんなりしながら、青宗がまるで尻尾を振っているような犬の顔をするものだからついつい頭を撫でてしまった。
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