The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「これ、すっごく有名なお店の羊羹なの。高級な物だけど、夫が貰ってね」
これは新作羊羹。
そして父さんが新作だからって、武道の父親であるおじさんに渡してた事を思い出した。
「じゃあ、ごゆっくり」
「あ、この羊羹シリーズ知ってるわ。高級なやつで有名だしな」
「そう…ですね」
「そうスっね」
「2人ともどうした?」
何故そんなに驚いているのだろうか。
そう言いたげな顔をしているが、だって自分の家の会社が作ってる羊羹なんて食べたくないだろう。
味が悪いとかじゃなくて、嫌なだけ。
元々自分の家の会社が好きじゃないし、なんか気まずくなるのだ。
「あ、この羊羹うまっ!」
俺と武道2人だけが何となく気まずい雰囲気の中、三ツ谷先輩は羊羹を食べ進めた。
そして夕方になる前、三ツ谷先輩が帰る事になり俺も一旦家に帰ることにした。
「三ツ谷くん、今日は来てくれてありがとうございました!」
「おう!またな、タケミっち」
「余ったやつ、冷蔵庫入れとくから。あと無理するなよ、まだ完全に回復したわけじゃないんだから」
「分かってるって」
本当に分かっているのだろうか。
多少な心配な残るもの、俺は武道の家を出てその玄関先で足を止める。
「じゃあ、家で待ってるな」
「はい。夕方過ぎぐらいにお邪魔しますね」
「おう。じゃあな和泉」
「はい」
今日の晩御飯はなんだろう。
完全に胃袋を掴まれた俺は、そんな事を考えながら家へと続く道路を歩いていく。
そんな時である。
ズボンの後ろポケットに入れていた携帯が、メールの受信を知らせる音を鳴らしたのは。
(メール…誰だ?)
何となく嫌な予感がしながらも、ポケットから携帯を取り出してディスプレイを見てからげんなりした。
送り主はあの九井からである。
「アイツからのメールって、大体面倒くさいの用事ばっかりなんだよな」
溜息を零しながら、一応メールを確認すると嫌な内容が綴られていた。
そこには『一緒に晩飯食いに行こうぜ。迎えに行くから逃げるなよ』とだけ。
「絶対、晩飯食いにいくだけで済まないよな…」
今までの体験上そう思いながら、拒否権なんて無いぞという感じのメールに『了解』とだけ送っておいた。
だがやっぱり九井の飯なんて嫌だな…と脳裏で考えていれば何となく逃げたくなってくる。