The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
名前を呼ばれて、頭をゆっくり上げれば秋にぃは苦笑を浮かべていた。
その表情に眉が下がりながらも眉間に皺が寄っていく。
だってそんな表情させたくなかったのに。
「そろそろ帰った方がいい。ここに来たって、本家の人間に知られたら嫌味言われるからな」
「…うん」
「手紙出すから」
「うん。じゃあ、帰るね…」
帰りたくない。
でもこの場にいるのが気まずくて、申し訳なくてパイプ椅子から立ち上がると『ギシッ』という音が響く。
そして面会室から出る時に、1回足を止めて部屋を見れば秋にぃが手を振ってくれていて振り返した。
神澤本家親族は、秋にぃと会うことを嫌がる。
殺人を犯したという事を毛嫌いしているが、その殺した人間に問題があったから。
「秋にぃ…」
少年院から出ると、蒸し暑さにクラッと来た。
なんでこうも暑いのだと思いながら、歩き出そうとした時である俺の足は止まり目を見開かせる。
「は…?」
「あ?和泉??」
「イズミっち??」
少年院の白い白い壁の所に、三ツ谷先輩と龍宮寺先輩がいたのである。
額や頬に汗を浮かばせて、ほんのり顔は赤く染っている姿で立っていて俺を見て目を見開かせていた。
だがその表情は俺もしていた。
だってまさかここで鉢合わせするとは思わなかったのと、1番ここで鉢合わせしたくなかったのだから。
「イズミっち、お前なんでここにいんだ?」
「あ、……いやちょっと……」
流石に言い難い。
そう思い言葉を詰まらせていれば、三ツ谷先輩と龍宮寺先輩は無表情のままお互い顔を見合わせていた。
「まぁ、言いたくなきゃ言わなくてもいいけどな」
「確かにな。無理矢理聞いたりしねぇから、んな警戒した顔すんなよイズミっち」
「あ…はい」
あからさまに顔に出ていたようだ。
そう思いながらも、聞き出されなかった事にホッとしながらも何故ここに2人がいるのか疑問を抱く。
ここは少年院の扉近くの壁。
そして見る限り、2人は恐らく長い時間ここにいたのだろう。
汗で服が湿っているのが分かるし、顔もかなり赤くなっている。
「お二人は、何でここに?」
「それは……あ」
すると龍宮寺先輩は歩き出し、それを目線で追いかけていれば少年院の出入口に夫婦らしき男女がいて龍宮寺先輩はその2人の元に向かっていた。