The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第1章 泣き虫ヒーロー誕生
突然の渾名に武道は困惑。
しかも後ろにいたドラケンまでがそう呼び、まるでその渾名を否定するなと言わんばかりの圧がこもった言葉を投げかけてきた。
「へっ!?」
するとマイキーはその場にしゃがむと手を伸ばし、武道の後頭部を掴むと笑みを浮かべた。
そして顔を近づけるとゆっくりと言葉を述べる。
「オマエ、本当に中学生?」
「っ!」
「タケミっち、今日からオレのダチ!!なっ♡」
「へ!?」
その時であった。
マイキーは腕を何者かに掴まれたかと思うと、まるで武道から引き離されるように後ろに飛ばされる。
飛ばされたマイキーは『おっとと』と言いながら、ケンケン足で体制を治した。
そして視線をゆっくりと上に上げれば、自分を睨むかのように眉間に皺を寄せながら武道の目の前に立っている和泉の姿があった。
「和泉!?」
「……和泉…」
「立て、武道」
視線はマイキーから逸らさずに、和泉は何処か冷たい言葉で武道に立つよう促す。
そして彼女に投げ飛ばされるようにされたマイキーは、武道が呼んだ名前を口で復唱してから笑みを浮かべる。
「そうだ、オマエの名前も教えてよ」
「普通人の名前を聞く時は、自分か名乗るのが礼儀では?」
「あはははっ!!確かにそうだな、オレは佐野万次郎。はい、名乗ったから名前教えて」
「神澤和泉」
「神澤……」
するとマイキーは一瞬だけ目を見開かせたが、直ぐに面白げに目が細められる。
そしてニッと笑いながらゆっくりと和泉に近づくと、額がくっつきそうなぐらいに顔を近づけた。
だが和泉は狼狽えずに、真っ直ぐにそして睨めつけるようにマイキーを見つめた。
彼のまるで黒曜石のような瞳を。
「じゃあオマエはイズミっちな♡そんで、オレのダチ」
「お断りします」
「え〜、何で?」
「アンタとはお友達になんてなりたくないので。そして勝手にあだ名を付けないでもらえますか」
冷たい声で言い放つ和泉に周りが凍りつく。
勿論未だに座り込んでいる武道もであり、その顔は一気に青ざめいった。
「えーそれはやだ。イズミっちはイズミっちだし、ダチって言ったらダチなの」
「は……?」
「イズミっちもオレのダチ、ね」