The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
鳴海を思い出すと、叱られた時のと彼女と交わした約束を思い出す。
まだ鳴海が生きていた頃に、2人だけで交わしたある約束であり鳴海が死ぬ1か月前に交わした約束だ。
ー4年前ー
その日は快晴。
雲一つない青空の日に、マイキーは鳴海の乗るバイクのタンデムに乗って海岸近くまで来ていた。
マイキーは鳴海が運転する後ろ姿が好きだった。
フワッと靡く黒髪と、風に乗って香る彼女が愛用している香水の匂いが好きだったのだ。
「ねぇ万次郎。お願いがあるの」
「お願い?鳴海がオレにお願いするの珍しーね」
「そう?」
鳴海は笑みを浮かべながら、カバンからある物を取り出してマイキーに見せる。
それは1枚のとある少女が写っている写真。
「誰?」
「私の従姉妹の和泉。可愛いでしょ?」
写真には黒髪に群青色の瞳をした少女。
その少女は何処と無く鳴海に似ており、従姉妹でも似ているのだなとマイキーは思いながら写真をまじまじと見た。
だが不思議な事があった。
少女に見えるが、男の姿をしているのは一目瞭然でありマイキーは首を傾げる。
「なぁ、なんて男装してんの?」
「……この子は生まれた時から、うんうん性別が女と分かってから男として生きるように決まってたの」
「は?なにソレ」
「一族の身勝手な仕来りで男の姿にさせられて、そして男の姿でなければ手をあげられる。そんな家に産まれた…」
ギュッと鳴海は唇を噛み、眉間に皺を寄せていた。
だが直ぐに優しい笑みに変わり、マイキーを見ながら口を開く。
「万次郎。この子のおじさんになってくれない?」
「………は?おじ、おじさん?」
「前から真一郎とね、この子がもし助けを求めてきたら養子にして娘にしようと決めてたの。この子も助けを求めたら、そうしてほしいって言ってくれてね」
「ああ、叔父って訳ね。オレ」
「そう!ホントは妹にしてあげたいけど、母さんが亡くなってるからそれは出来ない。だったら私が母親になってあげたくて……」
その言葉にマイキーは『ふーん』と言ってから、にっと笑みを浮かべてた。
子供らしい笑顔で。
「叔父さんは何か嫌だけど、兄貴になったなってやる!」
「万次郎…。ふふ、それでも良いわ…この子の家族になって愛してくれたら、私それが嬉しいの」
「オレが愛してやるよ!ソイツを!!」