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The best happy ending【東リべ/三ツ谷】

第3章 8・3抗争


まるで小さい子供に言うよに、柔らかい口調で佐野先輩は手を伸ばしてくる。
その手を取るべきなのだろうかと悩んでいれば、宙でさ迷っていた俺の手を佐野先輩が取って歩き出した。


「部屋でさ、なんか聞き覚えある声が聞こえんなーと思ったんだよね。んでケンチンが呼ばれたから外出て見たらイズミっちいるから驚いた」

「俺も驚きました…」

「まぁココにいれば驚くよなー!あ、ここがケンチンの部屋。どーぞ」


何故か佐野先輩が『どーぞ』と言っているが、俺は小さな声で『お邪魔します』と言いながら入る。
恐らくプレイ専用の部屋が龍宮寺先輩の部屋になっているんだろう。

部屋に入ればベッドに机とかあるが、何故かダンベルまで置いてある。
人の部屋をまじまじと見るのは失礼だが、ある物が目に入った。


「……写真」

「ん、写真。ケンチン沢山飾ってんの」

「…幼い」

「でしょ?」


写真には今より幼い顔の佐野先輩に龍宮寺先輩。
三ツ谷先輩もいればけーすけ君もいて、少し驚きながら写真を見つめる。


「て、あれ…?エマの写真がある」


満面の笑みを浮かべて頬を桃色に染めているエマの写真。
1枚だけじゃなくて、まぁまぁの数がボードに飾ってあり目を見開かせた。

いや、まぁエマは佐野先輩の妹。
だから写真あってと不思議ではない?かもしれないけど、それにしてもエマの表情が何時と違う。


「ケンチンとエマね、両思いなんだよー」

「……え!?」

「両片想いが正しいかな?なのに2人とも告白しねぇんだよなぁ〜」

「…両片想い」


え、なんか凄い複雑な気分。
思わずそう思った俺は眉間に皺を寄せながら写真を眺めていれば、佐野先輩の笑う声が聞こえた。


「嫌そうな顔してんじゃん。そういえばエマに聞いたけどさ…昔エマに近寄る変な男達とか告白しようとする男威嚇して近寄らせなかったんだってね」

「エマは大切な幼なじみだから、変な虫が近寄らないようにしてたんですけど……」


龍宮寺先輩は変な虫ではないと思う。
なんならその辺の男よりちゃんとしているだろうけど…なんか複雑な気持ち。

というか両片想いなのか。
エマも龍宮寺先輩が好きなんだ…と考えれば考える程、眉間に皺が寄っていくのが分かる。


「すげぇ眉間に皺寄せるじゃん!ウケる!!ケンチン、イズミっちに認めてもらわねぇとダメかなぁ」
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