The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「なんかさ、男に見えるけど女にも見える」
「そうか」
女と言えば八戒は卒倒しそうだな。
三ツ谷はそう思いながら、お茶を入れる為にグラスを用意していた。
八戒は女に対しての免疫が無く、話しかけらればフリーズするぐらいである。
「そういえばさ和泉って、神澤和菓子工業の所の人間なのかな」
「神澤和菓子工業……ってアレだろ。皇室とかに昔っから和菓子を献上してる所だよな。親族に政治家とか有名な医者に有名な社長とかいる」
「うん。ホラ和泉の苗字も神澤じゃん?それに神澤と言えばこの辺の殆ど神澤和菓子工業関係の人間だし」
八戒の言う通り、この辺りの神澤という苗字の人間は神澤工業の親族。
昔からいる一族であり、古く名高い家系であり知らない者はいないぐらいだ。
神澤家は和菓子工業と言うが、工業というより大きな会社である。
和菓子を制作する為に有名な和菓子職人を何人も雇い、制作しているのだ。
「でさ、神澤家ってやばい噂あるんだよね」
「やばい噂?」
「神澤家の本家は、当主の長子が女だったら男として育てろっていう噂。女である事を否定して、女であることを許さないんだって〜」
直ぐに三ツ谷は分かった。
和泉がその神澤和菓子工業の、神澤家の人間である事を。
何せ彼女が話していた事と一致しているから。
(和泉は自分が神澤家の人間とは言ってはなかったけど、神澤家の人間なんだな……)
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ー和泉sideー
「和泉、和泉」
「んっ…ん……」
誰かに呼ばれている。
柔らかい声で優しく名前を呼ばれており、不愉快にも感じない声。
低音だけど優しい温もりがある声。
そして頬に手が添えられるのを感じ、手から温もりが伝わってくるが煩わしくない。
「和泉」
優しい声。
こんな声で名前を呼ばれる事はそうなくて、そしてこんな優しい触れ方も無くて思わず手のひらに頬を擦り寄せた………所で目がパチッと覚めた。
「……え」
「あ、おはよう…っても夕方だけど…」
「三ツ谷、先輩……!?!?」
「うおっ!」