The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
笑いすぎた。
三ツ谷は苦笑しながら、目に見えて機嫌が悪い和泉の頭を撫でてやる。
だが子供扱いされている事に和泉は尚更機嫌が悪くなっていく一方だった。
「和泉、ごめん。明日和泉が食べたいご飯にするから、笑ってくれた事許してくれ」
「…俺は三ツ谷先輩が作ってくれるなら、どれでも美味しいので何でも良いです」
「…それは、嬉しいな」
完全に胃袋を掴めている和泉は、三ツ谷の料理は何でも食べれたら嬉しいのだ。
そう思いながら三ツ谷の自室に入ると、前と同じで仕切りがある部屋。
恐らく扉を開けて直ぐの所がルナマナの部屋。
そして奥が、三ツ谷の部屋なんだろうなと思えば三ツ谷が奥へと入っていった。
「適当に座っていいぞ。そこの本棚に漫画置いてあるから」
「ありがとうございます…」
「オレはちょっと裁縫してるから」
そう言いながら三ツ谷は布団の近くに置いてある、机に体を向ける。
机には裁縫セットや布等が置かれており、三ツ谷は針を手にしていた。
「ん?気になる?」
「え、あ…何作ってるのかなって」
「次のコンクールに出すやつ。と同時にルナマナに強請られて作ってるうさぎのぬいぐるみストラップ。昨夜から作ってたんだ」
「…凄いですね」
「そうか?」
三ツ谷の背中を見ながら、和泉は本棚の近くに座ると体を縮めて適当に漫画を手に取る。
すると三ツ谷はチラッと後ろを振り向いて、小さく笑った。
まるで猫みたいに丸まっているなと思いながら。
静かな部屋に糸を布に通す音、漫画を捲る音が響く。
そして外から聞こえてくるドラケンとルナマナのはしゃぐ声がたまに聞こえてくる。
(なんか…静かで平和だな)
まるで幼少期の時にいた家と似ている静かさと平和さ。
そう思いながら漫画を読み進めてしばらくの事、ふと作業音が聞こえなくなった事に和泉は視線を漫画から三ツ谷の方へと向ける。
「え……寝てる」
「スー…」
いつの間にか三ツ谷は雑誌を顔に被せて、布団の上に転がって眠っていた。
昨夜から裁縫をしていたと言っていたので、もしかして寝不足なのだろうかと和泉は驚きながら漫画を閉じる。
「三ツ谷先輩?」
声をかけてみるが返答はない。
どうやら本当に眠っているようで驚いてしまう。