The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
あの日の事を三ツ谷は思い出しながら、つい笑みを浮かべてしまう。
自分はあの時和泉の事を不審者と間違えてしまい、胸ぐらを掴んでしまった事があまりにもダサすぎて。
(妹を助けてくれたヤツの胸ぐら掴んじまって…和泉はオレへの印象が悪くなったんじゃねぇかな……)
だが初めて和泉を見た時、三ツ谷は驚いた。
まるでパチパチパチ弾ける炭酸ジュースのように、何かが弾けたような感覚。
そして何かが『コレだ』と叫んだ感覚が一気に押し寄せた。
「なぁ、三ツ谷」
「ん?」
「お前さ、イズミっちの事気に入ってんだろ?異性として、好意を抱く相手として」
ドラケンは意地の悪そうな笑みを浮かべ、机に肘をついてから顎を支えて横に少し顔を傾けた。
そんな彼を三ツ谷は横目で見ながらフライパンを手にする。
「無言は肯定として取るぞ」
「ああ、そうだよ。オレは和泉を気に入ってる…異性として欲しいものとして」
「やっぱりな。お前にも春が来たんだな〜今まで女の子は庇護対象しか見てこなかったのに」
ドラケンの言う通り、三ツ谷は今まで異性…女の子を庇護対象としか見ていなかった。
それは幼い頃から妹達の世話をしていたからだろう。
告白される事はあるが、どうしても庇護対象以上には見れられなかった。
「そうだな。まぁ和泉も庇護対象に見ちまうけど…まぁオレが守る前に自分の身は自分で守りそうだよな」
「あ〜確かに。まさか昨日はパーを蹴り飛ばすなんて思ってもいなかったわ!」
「綺麗に飛んだからなぁ。あの細身でどんだけ力があんだよって思ったわ」
昨日の集会で、武道を蹴ったパーを蹴り飛ばした和泉を見た時三ツ谷とドラケンは目を見開かせた。
オーバーサイズの服を身につけていても分かる細身て、足も恐くかなり細いのに体格の良いパーを蹴り飛ばしのだから。
だが三ツ谷はあの時、他の事でも驚いた。
蹴られた拍子に倒れた武道を見た瞬間、和泉の目は恐怖と焦りで埋め尽くされていたから。
「ホントな。蹴り技強いんだろうな…喧嘩賭博の時でもキヨマサを蹴り飛ばしていたからなぁ」
「マイキーと同じだな」
「だな。でもお前もマイキーと一緒だぜ?」
その言葉に三ツ谷は眉間に皺を寄せる。
言われなくても、それは分かっているのだから。